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春の月

「春の月」

cast
史果（ふみか）
斎藤　一

明里（あけり）
山南敬助（さんなん）←やまなみじゃなくて、さんなんで。

坂本竜馬
女将

永谷聡一（そういち）

浪人
香苗←ちょくちょく史果の前をうろうろしている
史果「季節は雪解けの始まり。風に舞い上がる春塵（しゅんじん）が春の訪れを伝える。
　　　まだ見えぬ桜の向こう。近づく貴方。響く声。零れ落ちる水のようにつぶやく声。
　　　そうして私は瞳を閉じる。春信の心のままで」

照明明るくなり、長いすで眠っている史果。聡一、史果を起こそうとする。

聡一「史（ふみ）、史さん」

眠っている史果、返事がない

聡一「史果（ふみか）さん！！！」
史果「なによー！！！」
聡一「良い娘がよだれたらして寝るな」
史果「よだれなんて（あわてて口を拭く）」
聡一「そんなんやから、今まで嫁の貰い手がなかったんよ」
史果「大きなお世話よ。女一人でも身は立てれる」
聡一「文明開化だかなんだかしらんけどな。よだれたらすのはどうかと」
史果「しつこい」
聡一「失礼な」
史果「用がないなら起こさないでよ。寝不足なんだから」
聡一「……また根詰めてたんか？」
史果「締め切りがちかいのよ。売れっ子作家は大変だ」
聡一「で、書けたんか」
史果「もーしばらく活字みたくない」
聡一「じゃあ、これはいらんか」
史果「なに？」
聡一「手紙や。さっき届いた」
史果「……果たし状？」
聡一「……んなもん貰うようなことしたんか？」
史果「身に覚えはない」
聡一「さよか」
史果「で、なんなの？　私に手紙？」
聡一「……懸想文（けそうぶん）やなかろうな」
史果「嫁の貰い手がなかった娘にくると思う？」
聡一「来んな」
史果「誰からなの？」
聡一「……藤田五郎とか」
史果「藤田？（手紙を見て、顔色を変える）」
聡一「史？」
史果「うわあ。えらいことだ！（退場）」
聡一「え、おい」

　　　　　　聡一、史果の忘れていった手帳を拾う

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