万華鏡オーバードライブ
キャスト
獅信/声
戒兎/声
沙耶華
雑魚
盗賊団長/獲智碁屋
ゴロツキ/刺客A
盗賊A/師
○何処か。何時か。
無音と暗闇が広がっている。男の声だけが響いていく。
声 貴方はそこにいるでしょうか?もうどれだけ歩いてもそこには辿り着けないような気がします。人生は万華鏡に似ているねと言った貴方は赤い赤いあの部屋で、腕の中で冷たくなっていきました。何が似ているのか解らない私には、どうやら貴方の事を思うと頭が、心が麻痺してしまうようなのです。最後の言葉に従って生き延びてきましたが、万華鏡の何に似ているのか、未だによく解りません。ただふと思うのは、いえ、思い知らされるのは、幾何学模様、愛憎模様。世界が回るから、その形を変えるのか?私が回るから世界が美しくなるのか?世界が回って、醜い模様が浮き出てきます。私が回って、醜い世界を突きつけられます。どうすればいいですか?先生。あの世があるならそこにいるでしょうか?私がどれだけ歩いたとしても、その門前で追い返されるか、落とし穴で地下の底まで落とされるでしょう。それでも、聴きたいのです。訊ねたいのです。まだ何も知らなかった私に、いえ、私らに
声が二つ重なっていく。どうやら、男。
声 あの日、どっぷりと暮れた夕暮れに、蕎麦の花が咲き乱れ、公孫樹の下で放たれた貴方の言葉が耳から、身体から、いえ、心から離れません。離れようとはしないのです。次の紡がれることはないだろう言葉を、ただひたすら待ってしまうのです。先生。世の中は相も変わらず、相変わらずです。数年間の血が流れた期間があったことさえ忘れたように、相変わらずです
片方の声が消えていく。
声 これでいいのか、それでいいのか?と声をあげたくなるときもあります。いえ、あげている奴もいます。それを見ても羨ましいとも思えません。何故でしょうか、自分がここまで冷めた人間だったことに驚きを隠せません。そこにいるなら会いに行きたいのです、今すぐにでも。会ってお訊ねしたいことが山のように積み重なって、霧散して消えていきます。そして証拠と無しに気泡のように浮かび上がってくる想いを押さえきれずにまた積み重ねていってしまうのです。あの赤い赤い部屋で冷たくなっていく貴方は、とても優しくて哀しい人でした。万華鏡が人生に似ているのか、どうか解らない私には世界は息苦しく感じます。ただふと思うのは、いえ、思い知らされるのは、愛憎模様、幾何学模様。世界が回るから、表情を変えるのか?私が回るから世界が醜く歪むのか?世界が回って、刹那に美しい模様が浮き出てきます。私が回って、刹那に純粋な世界を突きつけられます。どうすればいいですか?先生。あの世があるならそこにいるでしょうか?私がどれだけ歩いたとしても、その門前で追い返されるか、落とし穴で地下の底まで落とされるでしょう。それでも、聴きたいのです。訊ねたいのです。
声が二つ重なっていく。どうやら、同じ男。
声 愛憎模様、幾何学模様、反射関係に起こるその奇蹟に近い模様は確かに生きる事と似ているような気がします。万華鏡がぐるぐると廻る様に、どうやら人も世界も人生も廻っていく様です。
刹那の間。
そして光が弾けるとともに次の場面へ。
○夢島、八百八町。ワケあり疵ありが集まる街。
行きかう人々、様々な職種、色々な人々。
そんなまちのとある街角での出来事。
“無名都市の悪魔”、“剣鬼”の獅信、“花魁”沙耶華、“穀潰し”の雑魚の三人が、賞金稼ぎとしての日々。数人の盗賊団を三人で追い詰めていく。
盗賊A くっそぉ!!
盗賊団長 なんだ、お前ら。何モンだよ?!
雑魚 よくぞ聴いてくれました
沙耶華 “花魁”の沙耶華
雑魚 “穀潰し”の雑魚
獅信 “剣鬼”の獅信こと、何でも屋“シシン”ったぁ
雑魚&沙耶華 俺らのことだぁ
盗賊A し、しらねぇ…
盗賊団長 聞いた事ある?
盗賊A いや、無いッス
盗賊団長 やっちまえ!
三人に次々にのされていく盗賊団。追い詰められた盗賊たちが命乞いをする。
盗賊団長 俺らが集めた財宝をやるから、見逃してくれ
獅信 ふざ…
沙耶華 ふざけ…!!
雑魚 んなよ!!
獅信 おい、雑魚!
雑魚 はい、シンさん
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