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イチローさん

イチローさん。

馬鹿な兄貴とできのいい弟。
隣の家には、浪人生のイチローさんが住んでおりまして…

下手の椅子に座って、机の前で勉強している伸二。
上手でテレビを見ている兄貴。

明転。

笑っている兄貴。

伸二「ちょっと、静かにしてよ！」
兄貴「申し訳ない」

テレビの音量を下げ、しばらくテレビを見ている。
笑いをこらえる兄貴。

兄貴「ははははは」
伸二「ちょっと！音量下がっても兄さんがうるさきゃ意味無いんだよ！集中できないから」

テレビを消す兄貴。
平謝りをする兄貴を見て、勉強を再開する伸二。
しばらくして

兄貴「なあ伸二」

反応しない伸二。

兄貴「し〜ん〜じ〜」

反応しない。

兄貴「逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ…」
伸二「なんだよもう！」
兄貴「そんなにおこらなくてってよいではないかよおー。何の勉強をしておるのだ？」
伸二「理科」
兄貴「理科？あいつは俺の女だぞ！」
伸二「嘘だ、嘘だ、嘘だ！そんなこと信じるもんか！」
兄貴「これを見てみろ」
伸二「あ！どうして二人で写っているんだ？」
兄貴「むふふ。実はなあ、俺たちはなァ」

左手の薬指を見せる。

伸二「深爪なのか？」
兄貴「違う！結婚したのだあ！」
伸二「なに！？」
兄貴「もう子どもも二人いる」
伸二「いやああああ」

上手へ走っていく伸二。

兄貴「伸二。おまえには辛いかもしれないが、これが現実なんだ…」

戻ってくる伸二。

伸二「こいつで死んでやる！」
兄貴「なぬ！待て！早まるな！」
伸二「うるさい！俺は本気なんだ！今すぐこいつで…」

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