一つの願い
一つの願い

      作 こぶたにのる

登場人物
      女
      精
      男




       どこかの喫茶店
       雑音 有線とか 会話とか 外の雑踏・騒音とか うるさい
       テーブル 椅子があり
       (数人の客がいてもいい
        ウェイトレスも動き回っていてもいい
        普通に会話しててもいい)
       中央に女が一人 座っている
       じっとコーヒーカップをのぞいている

 

女   寂しいのは嫌いだ
    一人は嫌だ
    でもなぜか私は一人だ
    寂しいくせに一人でいたい
    一人でいたいくせにお店に入り
    嫌いなコーヒーを頼む
    誰かの周りに会話があって
    誰かが動いていることで
    私は一人ではないことに安心している
    そしてコーヒーを飲むことで孤独を味わう
    私の指はカップのふちをゆっくりなぞる
    高校のときに はやったおまじない
    コーヒーカップのふちを3回
    指でなぞり息を吹きかけると願い事がかなうという
    今ではみんなそんなこと卒業と同時に
    校舎に置いてきてしまったけど
    時折思い出しては
    カップのふちをなぞってみたりする
    馬鹿げたことだがそんなことを信じていた
    自分がいとおしいのかもしれない
    今ではそんなことなどあるわけないと知っているのに
    今日も私の指はカップのふちをゆっくりなぞっている


      なぞり終わるとカップに息を吹きかける
      と いきなり テーブルの下からカップの精が現れる


精   こんにちは

   
      世界は止まる 音も無い
      (先程まで会話していた客もウェイトレスも止まる) 

   
女   (一瞬 間)きゃあああああ
精   驚かないで下さい
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