天使は見えない
天使は見えない(作者 東京丈)

○出演 川村理沙(主人公:中学2年生。転校生)
    天野浩美 (中学2年生:エキセントリックな少女)
    山瀬真一(天野の元同級生。2年生進級前に死亡)録音テープを使えば5幕以外は、二役は可能
    その他クラスメート、女子A、B、美術部の先輩、

第1幕:中学校の教室
○舞台は暗いまま。理沙のモノローグ。
理沙「私が転校した中学校の2年C組に、天野浩美という生徒がいた。その子は、みんなから「天使」と呼ばれるおかしなコだった。別に彼女が、天使のように美少女というワケではなかったし、どちらかといえば、小さくて地味な女の子だった。私も、はじめはどうしてあのコが「天使」と呼ばれるのかわからなかった。でも、その疑問はすぐにとけた。「天使」というのは、良い意味ではなかった。天野浩美は、クラスで「天使」と呼ばれてハブられるほど、アブない奴という意味だったのだ。その浩美と初めて話したのは今でも忘れられない、体育の授業の前だった」

○舞台、明転。
○教室で、困って立ち往生している制服姿の理沙。クラスメートが理沙を無視してその傍らを通り抜けてゆく。

理沙「いけない。今日は体育の授業だった。体育着がこの学校とは違うと思って、持ってこなかった」

○浩美登場(学生服)

浩美 「私の友達になってくれる川村サンだよね?」
理沙「友達?どこかで会ったことあったっけ?」
浩美 「いいのいいの。彼(強調する)の言うことに間違いはないから。ウチの体育着使っていいよ」
理沙「ありがとう。私、前の学校の体育着、ここの学校みたいに短パンじゃないから、持ってこなかったの。あなたはえーと」
浩美 「天野浩美。ヒロミって呼んでいいよ。川村サンは親友だから。*そうだよね?」

注)以後、*マークは、浩美がその場にいない他の誰かに向かって話しているときに使う。

○話がかみ合わない浩美に不可解な思いを抱く理沙。が、始業のベルに慌てて体育着を受け取る。
理沙「ありがとう、助かる。でも浩美サンはどうするの?」
浩美 「ウチは見学だから着ないの。それに体育はだいっ嫌いだし。*え?そんなことを言ってもしょうがないじゃん。ウチ運動神経切れてるんだもん。真一こそ私のこと、運動神経切れてるんじゃないの? ってよく悪口言うじゃない」

○理沙、ちょっとこの子変なんじゃないかと構えながらも、気に掛かることを訊く。
理沙「さっき私のことを親友って言ったよね。あれどういうこと? 私の記憶が正しければ、浩美さんとは今日初めて話したと思うんだけど」

○浩美、取り合わない。
浩美 「そんなことはいいの。さあはやく行きなよ。体育に遅れるよ」

○浩美に手のひらで促され、納得行かないが仕方ないと首を振りながらロッカー室へ向かうために右袖へ退場する理沙。
○浩美、手を振りながら左へ退場
○舞台暗転


第2幕:放課後の通学路あるいは校庭
○ホリゾントが使えるなら、青空を投影する。

○浩美、鞄を下げて舞台の左袖から登場。
○右袖から、下校する生徒やテニスウエアの部員達が通過する。
○少し遅れて右袖から理沙登場。浩美が待っていることに気づき、舞台真ん中で二人が出会う。
浩美 「川村さんを待ってた」
理沙「さっき授業受けてた?今日は早退かと思ってた」
浩美 「聞いても分からないから、屋上にいた。下校時刻になったから親友と一緒に帰ろうと思って、さっきから待ってた」
理沙「さっきは体育着ありがとう。洗って返すね」
浩美「いつでもいいよ。ずっと持っててもいいし、親友だから」

○理沙無言。二人、舞台をゆっくり歩く

浩美 「ウチのこと、みんなになにか言われた?」
理沙「いや別に。特に何も言われなかったよ……」
浩美 「本当に?変な奴だとか、アブないとか近寄らない方がいいとか言われなかった?気を使わなくてもいいんだよ。だってウチらは親友だし」

○理沙、ワケわからない思いがついに爆発。その気持ちを大きなアクションで示す。
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