脚本ダウンロードサービス

秘密の契約

　　　依頼人、部屋の中を窺っている。

依頼人　まいったな。本当の殺し屋だったなんて・・・冗談半分に書き込んだだけなのに・・・本当に妻を殺しにきたのかな。とにかく何とか断らなきゃ・・・。

　　　依頼人、殺し屋が座っている部屋に入っていく。

依頼人　お待たせしました。
殺し屋　いい部屋だ。綺麗にしている。
依頼人　ええ、妻が毎日掃除しているので。
殺し屋　いい奥さんだ。
依頼人　ええ、そうなんですよ。いい妻なんです、だから・・・。

　　　殺し屋、カバンから出して何かを置く。

依頼人　（読んで）確かな実績。安心の明瞭会計・・・。
殺し屋　うちのパンフレットだ。
依頼人　・・・パンフレット・・・。
殺し屋　キャンペーン中だ。今なら殺しの七つ道具がついてくる。
依頼人　・・・。
殺し屋　殺しメニューが幾つかある。（パンフレットを指す）
依頼人　ニコニココース、お手軽爽やかコース・・・。
殺し屋　お勧めは全部乗せスペシャルだ。
依頼人　あの、これは一体・・・。

　　　殺し屋、カバンから出して置く。

依頼人　契約書？
殺し屋　きちんとしないとな。
依頼人　え？
殺し屋　うちはそこら辺の殺し屋と違って、きちんと書面に残す。法治国家の常識だ。
依頼人　じゃあ、妻を殺しに来たわけじゃないんですね。
殺し屋　契約が先だ。押し売りはしない。商法で禁止されている。
依頼人　あの・・・。
殺し屋　何か問題があるか？
依頼人　ええ・・・実は。
殺し屋　問題が生じた場合でも，最寄の裁判所に相談することになっている。ここだ。（と契約書の書面を指す）
依頼人　裁判所で争うんですか？
殺し屋　きちんとしないとな。実は来年当たり、上場も狙っている。どうだ。うちに任せれば安心だろう。
依頼人　・・・はあ・・・。
殺し屋　それなら早速、ここに判を押せ。
依頼人　・・・あの・・・ご丁寧に説明をして頂いたのに、大変申し訳ないんですが、実は妻を殺すのはやめようと思いまして。
殺し屋　なに？
依頼人　せっかく来て頂いたのにすみません。やっぱり昨日はどうかしてたんです。
殺し屋　お前・・・冷やかしだったのか。
依頼人　決してそのようなわけでは・・・。
殺し屋　新幹線で来たんだぞ。朝一番だぞ。
依頼人　すみません。
殺し屋　手ぶらじゃ、出張手当も出ないんだぞ！
依頼人　すみません。
殺し屋　コノヤロウ。

　　　殺し屋、懐に手を入れる。

依頼人　そんな押し売りはしないって言ったじゃないか。やめてくれ。やめてくれ！

　　　ドンと机に何かを置く。

依頼人　ひいっ。（見て）・・・チケット？
殺し屋　阪神巨人戦。取って置け。
依頼人　いりません。どうか帰ってください。

1/2

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで！