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リストラレストラン

　　　お客が歩いてくる。

お客　やっとあった。店だ。この辺、全然ないんだもんなぁ。滅茶苦茶腹減ったぁ。ん？リストラン？字が間違ってねえか？（店に入る）
店員　（現れ）いらっしゃいませ。
お客　一人。
店員　・・・。
お客　一人ね。
店員　・・・はあ。
お客　あの、一人って言ってんだけど。
店員　あなたも。
お客　は？
店員　私もです。妻にも娘にも逃げられましてね・・・。
お客　・・・いや、それは何とも言い難いんですけど・・・席に案内してくれませんか。
店員　・・・人ごとだと思って・・・。
お客　・・・いや・・・あの客なんですけど？お腹が減ってて、早く席に案内してくれませんか。
店員　帰って下さい。
お客　ええ！？

　　　店員、下がろうとする。

お客　ちょ、ちょっと。ちょっと。随分、横柄な店だな。
店員　一名様、お帰りです！
お客　わかった。わかった。わかりましたから。大変ですね。胸中、お察しいたします。これでいいですか。
店員　リストラにあいましてね・・・。
お客　まだ続くんですか・・・そういえば偶然でしょうけど、リストランて書いてありましたよ。（笑う）
店員　そう。ここはリストラされた者しか雇わないリストラン。それが売りなんです。
お客　エエ！っていうか売りにならないでしょ。
店員　客席、全部窓際。（と示す）
お客　本当だ！
店員　店のマークは、リスとトラ。
お客　徹底してる・・・。
店員　店の経営、崖っぷち。
お客　・・・それ、潰れそうなだけでしょ。
店員　とにかくそのような店ですが、宜しいですか？
お客　ええ。
店員　本当にいいんですか？
お客　もう食べれればなんでも。
店員　本当にいいんですね？
お客　いいですって。
店員　はあ・・・客か・・・面倒だな・・・どうぞ・・・。
お客　・・・何か本当、やる気ないな・・・。

　　　お客、座る。

お客　お勧めってありますか？
店員　（嫌々）は？お勧め？
お客　いや、ないならいいんですけど。
店員　あります。
お客　それは・・・。
店員　首きり！金目鯛の兜煮。
お客　首きり？
店員　首切り！イカのゲソ焼き。首切り！ギロチン風若鶏の丸焼き。
お客　ちょっと、なんで全部、首切りがつくんですか。
店員　料理の形をうまい具合に表現しています。
お客　うまくないでしょ。
店員　首切り！クズキリ！
お客　それは駄洒落でしょ。とにかく、つかないのないんですか。
店員　失業、黄昏のカルパッチョ。解雇、電車飛び込み挽肉炒め。
お客　食いたくないな・・・。
店員　麩のケーキ、フケーキ。

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