外国語の怪文書
『外国語の怪文書』
知らない言語というのはそれだけで脅威的である。そしてそれを目の前にした者はすべからく滑稽である。
何故なら、知らない言語で綴られた言葉や文章は、内容の如何に関係なく、理解することができないのだから。
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少年が三人、分厚い本を開いて、議論している。
A「だめだ……なんて書いてあるのかわかんねえ」
B「何語だ?」
A「英語だろ、多分」
B「英語かあ……。英語じゃあ、わかんないよな」
A「英語だもんなあ」
本をじっと見る。
B「だめだ。全然わかんねえ。変な記号がいっぱい並んでるだけだよ」
A「だって英語だぜ?読めるわけないじゃん。こんなものものしい本だぜ。きっとすごいことが書いてあるに違いない!」
B「おお〜。外国の偉い先生が書いた論文、とか?」
A「おお〜。外国の政府の機密文書とか」
B「おお〜。ねえ、山田君は何が書いてあると思う?」
C「ねえ、ちょっと見せて」
A「いいよ」
本を渡す。
わくわくしながら本を見るC。しかし、すぐに表情が曇る。
C「……読めるよ、これ」
AB「マジで!?」
B「なんて書いてあるの!?」
A「きっとすごい言葉が飛び出すに違いないっ!」
B「さあ、どうぞ!」
C「……ディスイズアペン。」
間。
A「え?なになに?どういう意味?」
B「これは、ペンです」
AB「おお〜」
B「すっげ、すっげ!そんな事が書かれてるんだ!」
A「さすが英語〜。全然わかんねえ」
C戸惑った顔。
B「他には?他には?何て書いてあるの?」
C「えーっと……イズディスアウォール?ノー、イッツアペン」
間。
AB「おお〜」
A「すっげ、すっげ」
B「どういう意味?どういう意味?」
C「……これは壁ですか?いいえ、それはペンです」
AB「おお〜」
A「さすが英語だ」
B「そんなことが書いてあるんだあ」
C、戸惑って笑う。
C「でもさ、これってあれだよね。見てわかれよって感じだよね」
A「ん、どういうこと?」
C「だからさ、『これは壁ですか?』って訊いて、『いいえ、それはペンです』って返してるだろ?普通さ、ペンを見て『これは壁ですか?』なんて訊かないだろ。見てわかれよって話だろ?」
笑うC。
B「ああね、ああね。やっべー、気付かなかった!」
A「さすが山田君!塾に行ってるだけの事はあるね!」
C「いや、塾とか関係ないんじゃないかな?」
A「じゃあさ、こっちはなんて書いてあるの!?」
C「えっとね、ハロー!ミスタースミス!ハイ!タケシ!ハウアーユー。アイムファインセンキュー。アンドユー?アイムファイントゥー。」
AB「おお〜」
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