人類最終局面突破兵器・オギャングリオン
『人類最終局面突破兵器・オギャングリオン』

人間は仕事の為にどこまで自分を犠牲にすることができるのか。公私共に、である。
それが人類存亡に関わったとしても。



少年…ヒロシ(パイロット)
女…チサト(作戦部長)
男…ヒロシの兄(司令官)


少年「チサトさん、ずっと僕の事を騙していたの?」
女「ごめんなさい、ヒロシ君」
少年「今まで僕に優しくしてくれたのは、僕がパイロットだから?」
女「そうよ」
少年「ひどいよ……ひどいよチサトさん。人類を守る為に、僕の心を踏みにじったんだね……」
女「……そうよ」
少年「ひどいよっ!」
男「ヒロシ!甘ったれるんじゃない!お前があれに乗らなきゃ、人類は滅亡するんだ。お前はパイロットなんだよ。人類最終局面突破兵器・オギャングリオンのパイロットなんだよ!」
少年「なんだよそれ!兄さんは弟の僕と、人類と、どっちが大切なんだよ!」
男「人類が滅ぶということは、ヒロシも死ぬということじゃないか!」
少年「そういうことじゃないっ!……もう僕は、オギャには乗りません」
チサト「ヒロシ君!……あなたがオギャに乗らないと、世界が終わってしまうのよ。あなたはオギャングリオンのパイロットなのよ」
少年「そんなの知らないよ!……作戦部長のチサトさんと、司令官の兄さんが付き合ってること、僕、知ってたんだ」
二人「!?」
少年「それなのに、チサトさんは僕に優しくして……ひどいよ!二人の会話、僕、聞いたんだ。兄さん、チサトさんに言ってたよね?『パイロットのメンテナンスも、作戦部長の君の仕事だ』って。僕は兄さんの人形なんかじゃない!」
男「…………」
少年「チサトさん、僕に優しくしてくれたのは、全部嘘だったんだね……」
女「…………」
少年「僕が学校でいじめられた時に、優しく慰めてくれたのも、仕事だったからなんだね」
女「そうよ」
少年「僕の為に毎日ご飯を作ってくれたのも、僕がパイロットだからだったんだね」
女「そうよ」
少年「毎朝いってらっしゃいのチューをしてくれたのも、僕をオギャに乗せるためだったんだね」
女「そうよ」
男「!?」
少年「学校に行ってる時も『大好きよヒロシ君、勉強がんばってね、ハート』ってメールしてくれたのも、僕を戦わせるためだったんだね」
女「そうよ」
男「!!??」
少年「お風呂に入る時、いつも背中を流してくれたのも、僕の士気を上げるためだったんだね」
女「そうよ」
男「!!!???」
少年「僕が夜寝る時に、毎晩毎晩、僕のベッドでチサトさんが――」
男「ストップ!え、何?お前そんなことしてたの……?」
女「(敬礼)はっ、司令官殿。自分の任務は、作戦立案及びオギャの運営、パイロットの管理であります。パイロットのモチベーションの維持・増進が自分の任務であると、司令官殿のご命令であります」
男「え、ちょっと……あのさあ、俺たち付き合ってるよねえ?」
女「今は任務中であります。プライベートの話は任務完遂後にお願いします」
男「あ、うん。ヒロシ、そういうわけだ。オギャに乗るんだ」
少年「兄さんは黙ってて」
男「いや、あのね、人類の存亡がかかってるからね」
女「そうよヒロシ君、オギャに乗るのよ。これは人類のためなのよ」
男「そうだ!人類最終局面突破兵器・オギャングリオン、発進!!」
少年「チサトさん、じゃああれも人類のためにやってたって言うの?」
男「え、まだあるの?」
少年「僕がニンジンを残した時、(かわいい声で、頭の上で手をウサギの耳のように立てる)『ヒロシ君、ニンジンも食べなきゃ大きくなれないピョン。好き嫌いはダメだピョン』って言ってたのも、人類の為だって言うの?」
女「そうよ」
男「ええー」
少年「じゃあ毎朝僕を起こす時に(かわいい猫なで声で、手はネコのポーズ)『ヒロシ君、早く起きるニャ〜。学校に遅刻しちゃうニャ〜。ヒロシ君が起きてくれないと、チサト、困っちゃうニャ〜』」

1/2

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム