タケノウチ7号
   タケノウチ7号
 
 
 博士 
 助手 平川
 
 

 博士、座っている。
 助手、入室。

助手 「博士! ついに完成しました!」
博士 「おお、本当か? 平川君」
助手 「そんな嘘がつけるほど、私にユーモアのセンスはありませんよ」
博士 「そうだな。君は昔っから笑いの才能がない。私が幾度となくギャグをかましても、君は全く気付かずに、一切リアクションしてくれず、私は幾度となく枕を濡らし」
助手 「そんな話はどうでもいいじゃないですか」
博士 「ああ、すまん。少し気が動転しているようだ。……完成したのだね」
助手 「はい」
博士 「我々、いや、全人類の長年の夢だった、アンドロイドが!」
助手 「はい!」
博士 「私がこのメカニック工学の道に足を踏み入れてから早四十二年と五ヶ月。その間、ずっと夢見続けていたアンドロイド」
二人 「タケノウチ7号!」
博士 「そうかー、ようやく完成したかー」
助手 「博士の長年の夢が、今現実となったんですよ」
博士 「ああ。思えば、君を私の研究所に迎えたとき、こんな日が近く訪れるだろうと思っていたよ。君は全てにおいて完璧だった。計算能力は早いし、頭の回転も速いし、甘いマスクにつやつやお肌。百メートルを十秒台で走り、義理人情に厚い下町生まれのイタリアン」
助手 「あの、私の生まれは高知ですけど」
博士 「……ジョークだよ、ジョーク。気付けよ。君にもう少しユーモアのセンスがあれば言うこと無しの完全無欠なのだがなあ……」
助手 「すいません」
博士 「私もタバコはやめました」
助手 「……そうなんですか?」
博士 「だーかーら! ジョークだよジョーク。君の謝りを表すすいませんと、タバコをすいませんっていうのを上手くかけた言葉遊びじゃないか。もう少しそういう勉強もしたらどうだ?」
助手 「はあ……でも……」
博士 「何だね」
助手 「上手くはないですよね」
博士 「うるさい!」
助手 「すいません」
博士 「はあ……さて、最終的にタケノウチ7号にはどのような機能を搭載したのだ?」
助手 「はい。一言で言えば、見ただけではアンドロイドだとわかりません」
博士 「何? そこまでか」
助手 「はい。さらに、多少会話したくらいでもわかりません」
博士 「声も出せるのか」
助手 「はい。博士の作成したプロトタイプから六段階進化させましたから」
博士 「ふむう。確かに私が作ったタケノウチ1号は、見た目ロボ丸出しで、声も出せず、出来ることといえば二足歩行くらいだった」
助手 「あれから五年の歳月をかけ、このように進化したのです」
博士 「なるほど……やはり、君を研究室に引き入れたのは、間違っていなかったようだな」
助手 「いえいえ。その他にも、タケノウチ7号には様々な機能を搭載しております」
博士 「ほう?」
助手 「まず、普通の人間より何倍も強靭です。ですから、十階建てのビルから落ちても壊れません」
博士 「すごい! それでこそロボットだ!」
助手 「さらに、歩くことはもちろん、走る事も出来ます」
博士 「ほほう」
助手 「その速度は、百メートルを十秒台で駆け抜ける事が出来ます」
博士 「それはすごい! 君と同じくらいじゃないか」
助手 「いえ、私はそんなに早く走れません」
博士 「だから、ジョークだよ。さっきのジョークを受けてのこのジョークがどうしてわからないんだ」
助手 「すみません」
博士 「まあいい。それから?」
助手 「はい。えーと……そんなところです」
博士 「何? それなら、見た目人間のようで、人間のように喋って、歩いて、ちょっと早く走れて、かなり頑丈ってだけか」
助手 「はい、今のところは」
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