悲しき工場長
悲しき工場長
刑事1
刑事2 明らかに三十代
工員1(刑事2と同一人物)
工員2(刑事1と同一人物)
刑事1、刑事2、現場検証を行っている。
刑事1「しかし……いったいどうしてだと思う?」
刑事2「何がですか?」
刑事1「どうして、人を殺したりするんだろうな」
刑事2「……今は、そんなことを考えている時間ではないと思いますよ」
刑事1「わかっているさ。しかしなぁ、こうも多く殺人事件に関わっていると、そんなことが考えてしまうんだよ」
刑事2「珍しいですね。大体は慣れてしまうと聞きますけど」
刑事1「ああ。だから、俺はデカには向いていないのかもな」
刑事2「……そうかもしれませんね」
刑事1「お前は、どうだ」
刑事2「僕ですか?」
刑事1「何年になる。この世界に入って」
刑事2「二年目です」
刑事1「そうか。それならまだわからんだろうな。いや、若造扱いしているわけじゃない。そんなことを考えている余裕がないくらいが、デカにはちょうどいい」
刑事2「……続けましょうか」
刑事1「ああ」
刑事二人、しばし作業。
刑事1「ちょっといいか」
刑事2「はい」
刑事1「二年目?」
刑事2「はい」
刑事1「お前、いくつだ?」
刑事2「27.5です」
刑事1「靴のサイズじゃない」
刑事2「ユニクロだったらLを」
刑事1「服でもない。何だ、俺は、お前に誕生日プレゼントを買おうと考えていて、さり気なく、と言うにはあまりにストレートにサイズを聞きだそうとしちゃったー、みたいな感じか?」
刑事2「続けましょうか」
刑事1「待て。辱めるな」
刑事2「何ですか」
刑事1「お前の年はいくつだ?」
刑事2「いくつに見えますか?」
刑事1「キャバ嬢か」
刑事2「発見時のガイシャの状況なんですけど」
刑事1「だから、待て!」
刑事2「何ですか」
刑事1「お前は何歳だ?」
刑事2「十万とんでとんでとんで」
刑事1「デーモン小暮かっ!」
刑事2「ガイシャの服についていた血痕がですね」
刑事1「待て!」
刑事2「何なんですか!」
刑事1「何故キレる」
刑事2「いえ、別に」
刑事1「だから、何歳だと聞いているんだ」
刑事2「三十五です」
刑事1「で、刑事になって二年目、と」
刑事2「はい」
刑事1「デビュー遅すぎじゃないか?」
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