短編劇集 山猫ドッペルンゲンの話
入門宮沢賢治
「山猫ドッペルンゲンの話」・・入門宮沢賢治・・
原作 宮沢賢治 「注文の多い料理店」「雪渡り」「銀河鉄道の夜」他
脚本 結城 翼
★登場人物
山猫
男1
男2
声1
声2
女1
四郎
かん子
紺三郎
ジョバンニ
カムパネルラ
父
ザネリ
大学士
★プロローグ
うおーん、うおーんという声。風が走る。
ぼんやりと、明るくなると上、下にそれぞれドアと椅子。中央奥に古びたオルガン。
下手の椅子(ここでは中央よりにある)に座った山猫。
どこか、宮沢賢治に似たコートを羽織り、帽子をかぶって、本を読んでいる。そばには古くなった旅行鞄。
ふと、顔を上げる。
あなたに気付いたようで本を閉じる。
山猫 :私?私、山猫です。はい。山猫ドッペルンゲン。うおほん。ドッペルンゲンです。よろしく。え、ご存じ無い?無い。ほんとに?無いの・ ・かーっ。(間。気を取り直して。)ああ、ところであなた、狼が森の、どうっと吹く風、知ってますか。あれは実は私の息なんです。ほ ら。
と大きく、吸い込み、はーっと吐く。
山猫 :うおーん。
風がどうっとうなって、吹きすぎる。
山猫 :でしょ。
にこっと笑うと。ぼこぼこっと泡が立つような音とともに。
声1 :クラムボンは笑ったよ。
声2 :クラムボンはかぷかぷ笑ったよ。
声1 :クラムボンは跳ねて笑ったよ。
声2 :クラムボンはかぷかぷ笑ったよ。
くすくすっという笑い声が聞こえては消える。
山猫 :でしょ。ああ、気になさらないように。あなた、あれは風が拾った声です。はい。誰でも聞こえるんです、もう、本当に。狼森や笊森をど うっと吹き抜いてくると、風は色々な声を拾うんです。
もう一度、大きく吸い込み、はーっと吐く。
山猫 :うおーん。
風が再びどうっとうなって、吹きすぎる。
山猫 :ほら。
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