「蔵(くら)」   作 玄崎 尭(げんざき ぎょう)

登場人物
・俺
・友人

舞台
・友人のおじさんちの蔵の中

        1場
   
        真夜中。犬の遠吠え。
        明かりつく。薄暗い蔵の中に、2人の男の姿が浮かぶ。

俺    …なあ、本当にこんなところにお宝なんかあるのかよ。

友人   大丈夫だって。富義(とみよし)おじさん、この蔵に結構骨董品
    貯め込んでんだよ。

俺    でもどうせアレじゃねぇの?「出張お宝鑑定」で「ジャカジャン、500円!」
    てなやつばっかりとかさ。

友人   結構見てるなお前。ところがそうじゃないんだな。富義おじさん骨董マニア
    なんだけど、滅多やたらと人に見せたりはしないんだよ。

俺    え?ああいうのって、ウチの家宝だとか言って見せびらかすのが楽しいん
    じゃなくて?

友人   いや、それがさ。おじさん「人に見せたら目アカがつく」って言って
    じっくり1人だけで楽しむんだよ。よほどこだわりがあるんだな。

俺    ってことは…?

友人   二つに一つさ。おじさんの骨董品を見る目が並外れているか。
    もしくは、並外れて劣っているか。

俺    バクチだな。

友人   バクチならこの際だ、でかい方がいいだろ?面白くてさ。
    わくわくするな。なぁするだろ?

俺    するけど、…つくづくコレ俺達がやろうとしてるの、明らかに泥棒だよな。

友人   今更何言ってんだよ。もうこんな蔵の中に黙って潜り込んだ時点で遅いだろ。

俺    そうだけどな。

友人   だいたい価値ある品をおじさん1人だけで眺めるって、本人は楽しいかも
    しれないけど俺は我慢出来ないね。やはりその…、誰もが認める付加価値が
    つかないと。

俺    早い話がカネだろ。

友人   そうだねカネだね!カネ以外に何があろうか、いやない!!

俺    静かにしろよ、誰か来たらどうすんだ。

友人   OK、OK。よし段取りをおさらいしよう。
    この蔵の中で目ぼしい物を見つくろって運び出す。

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