『鬼ごっこ、人ごっこ』 -2005-
第二稿 150分ver.
『鬼ごっこ、人ごっこ』
CAST 由希
昴
響
兄
男
友人A
友人B
占い師
序
暗闇の中に光が差す。
光の中には男が一人立っている。
虚ろな眸をした少年は何かを懇願するように空を見上げる。
よく見ると、首には大型犬用の首輪が巻かれている。
響 「あたしには何もない。あたしの価値なんて何もない。所詮誰かの代わりでしかない
あたしは、大切なものを全部持っていかれる。
何をしていても、誰と一緒にいても、落ち着かない。満たされない。あたしの心は
空っぽ。虚無感が、どうしようもなく虚無感が、あたしを支配していく。
この気持ちは何?どうしてあたしは満たされないの?空っぽなの、全てが。心の中
が伽藍としていて、すごく物足りない気持ちがするの。足りない、足りない、足りな
い。何かが決定的に足りない。
意味がない、あたしには意味がない。この世界には意味がない。あたしには生きて
いる意味がない、理由がない。
わからない。……わかんないよお……」
沈黙。
響 「誰か、あたしを見て。本当のあたしを見て。あたしだけを見て。必要として。誰か
あたしを必要として。あたしだけを必要として。お願いだから! ……誰か、あたし
を好きになって」
肩を抱いて膝を折り、その場にうずくまる。
暗転。
第一章
十一月二十四日(木)
場所は由希の部屋。
女子高生の部屋にしてはひどく殺風景でほとんど物が置いていない。
部屋には男が二人。
一人は虚ろな目をした少年。部屋の中央でぬいぐるみを抱えて遊んでいる。その姿はま
るで無邪気な子供のそれである。
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