ナビゲーション
『ナビゲーション』
電話で待ち合わせ場所をナビゲーションをする男の話。
99%一人芝居。
電話での道案内など、得てして分かりにくいものだ。
キャスト
男1
男2
男1、電話をしながら相手に道を教えている。
男1「その道その道。そうそう。それを真っ直ぐ来て。
そしたらでっかいビルがあるから。
そうそう、で、その道を右折して。そうしたら薬局が見えるだろ?そうそう。ペコちゃんがいるやつ。
そのまま真っ直ぐ行くと、図書館が見えるだろ。そのまま中を突っ切って。ハリーポッターが全巻揃ってるけど、読みたくなる誘惑に負けないで、そのまま進んで。
え?興味ない?そう。
で、真っ直ぐ進んで行ったら女子トイレがあると思うんだけど、そのまま入って。うん、そう。で、トイレの窓から出て。近道だから。
幅が50センチくらいしかないけどがんばって。
で、トイレから出たら目の前の壁をよじ上って。上った?うん。そしたら降りて。民家だから。うん。
え?何怒ってんの?大丈夫。そこの家の長女がすげえ美人だから。ほんと?うんー。
で、次に家に上がって。そうそう。土足でいいから。で、まっすぐ進んで。え?壁があって進めない?それくらい壊して進めよー。
壊した?早いなあ。よし。で、そのまままっすぐ行ったら、小道に出た?そう。そこで一進一退してて。はいはい。そうだよ。
ん?進めない?それはお前のがんばりが足りないんだよ!
もっと必死に一進一退して。進めた?
ダメか。じゃあ三歩進んで二歩下がってみて。おお、進んだ?ああ、さっきより速い。やったじゃん。
で、右手に赤い屋根の家あるだろ。は?ない?じゃあ回れ、右。はい。180度回った?よし、右手に赤い屋根の家見える?そう、それ!じゃあその家に向かって叫んで。
「なんじゃそりゃー!」って。いや、聞き返すなよ。あ、叫んでたんだ。恥ずかしがらずに何回も言ってみて。だから聞き返すなって。あ、叫んでたのか。
そしたら、犬に吠えられるだろ?はいはい。で、犬が出てくるから、全力で逃げて。はあ?どっちにって、そこまで俺に頼るなよな!自分が逃げやすい方に逃げろよ!
あ、そいつデカいから気をつけろよ。噛まれたら多分死ぬよ。はい、がんばれがんばれ!がんばれがんばれ!よし、巻いた?逃げきった?よし。
えっと、そのへんにマック見える?え?3つある?じゃあ、好きなところ行って。
で、マック過ぎたらガソリンスタンドあるじゃん。え?4つある?まあ、好きなところでいいから。
で、ガソリンスタンド越えたらドラッグストアあるじゃん。ない!うん。
で、そこのT字路を右左折して。
はいはい。で、坂あるじゃん。それを上っても下りてもいいから。
で、そのまま真っ直ぐ行くと何かあるから。
そう、何かあるから。多分。
で、その道だかなんだかよくわからないところを進むか戻るかしてたら、目印になる建物が、ないから。そう、ないから。
で、そのまま直進か蛇行だかしてると、まあ、それっぽいところに、出ないから。そう、出ないから。
で、そのへんで右往左往してて、そしたら着くから。」
男2が現れる。男2も電話をしている。
男2「着いた!おまたせ」
二人、笑顔。
暗転
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