眠り姫
     「眠り姫」       
                     結城翼
                     
☆登場人物
亜莉子・・
眠り猫・・
帽子屋・・
 
Ⅰオープニング
 
ごうごうと闇夜の竹林を吹き抜けていく風。
果てしもなく深みへと吹き抜けていく。
舞台中央にベッドがやや斜めに置かれている。頭の方が高くなっている。
ベッドの奥には赤い高さの違う赤い柱が二本門のように立っている。
ベッドの傍に黒い椅子が一つ。
眠っている亜莉子。
ちらちらと灯りが揺れる。
看護師とおぼしき女(眠り猫)が脈を測っているようだ。うなづき何事か記入している。
        医師らしい男(帽子屋)が入ってくる。
 
帽子屋:止まないねー。
 
眠り猫気づかない。
 
帽子屋:嫌な風だ。
眠り猫:えっ。・・ああ・・何かおっしゃいました。
帽子屋:不気味だといったのさ。
眠り猫:不気味?何が。
帽子屋:吸い込まれそうな音じゃない。
 
風がごうごうと竹林を切り裂いていく。
 
眠り猫:あら、結構吹いてますね。
帽子屋:どこまで行くのかな。
眠り猫:何が。
帽子屋:風。
眠り猫:低気圧が通るって言ってましたから。
帽子屋:そうじゃない。
眠り猫:それたんですか。
帽子屋:さあ、見てないな予報は。そうじゃなくて。
眠り猫:は?
帽子屋:いいよ・・もう。
眠り猫:どこから吹いてくるじゃないですか。
帽子屋:え。
眠り猫:竹林の方から吹いてるんじゃないですか。
 
二人、風の音を聞く。
ごうごうとした風の音。
灯りがちらちらする。
 
帽子屋:配線がゆるんでるのかな。
眠り猫:見てきましょうか。
帽子屋:いいよ。止むだろそのうち。
眠り猫:明日の夜まで回復しないって言ってましたけど。
帽子屋:いいよ。どこへ吹いていったって、、どこから吹いてきたってたいした問題じゃない。
眠り猫:灯りの話じゃないんですか。
帽子屋:だからいいよ。切れたらなおしゃいい。
眠り猫:でも。
 
ちらちらとする灯り。
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