八月の雪
「八月の雪」
原作 宮部みゆき「人質カノン」(文藝春秋社刊)所収『八月の雪』
脚本 結城 翼
★登場人物
石野 充 中一。正義感が強かったせいで事故に遭う。
飯田 浩司 中一。いじめが原因で鉄道自殺する。
石野 容子 充の母。
石野 政夫 充の父。
柴田 源次 充の祖父勝一郎の友人。
青木 忍 充の同級生。
角田 真理子 同。
上野 健二 同。浩司をいじめていた。
江藤 則雄 同。〃。
島野 剛 同。〃。
竹田 頼子 充たちのクラスの先生。
Ⅰプロローグ
夏の暑い蝉の声。
溶明。
高い壁が囲む、閉ざされて薄暗い部屋。
エアコンの音のみが聞こえる。
ぼーっと寝ている充。天井とにらめっこをしている。顎の下まで毛布を引き上げている。
部屋の外で電話が鳴る。
10回鳴って切れる。
天井を仰いだまま、あくびをする充。
間。
又あくびをする。
電話のベル。ちらっと子機を見るが出ようとはしない。身じろぎもしないで、天井を見ている。
13回目のベル。
玄関のドアをあわただしく開ける音。廊下を走る音。
15回と半分鳴ったとき、母が答える。
息が切れているようだ。
容子 :はい、石野でございます。・・すみません、買い物に出てまして。・・え?!
短い間。
容子 :いつですか。・・ええ、わかります。・・はい、とにかくすぐ参ります。はい。はい。
電話が切れる。
すぐ又電話をかける母。
早口で、焦っている。
容子 :あ、営業第二部の石野をお願いします。家の者です。はい。・・え、そうですか、それでは・・。
声は消える。
間。
階段を上がってくる母。
おずおずとノックする。
充 :なあに。
ドアが開き、顔を出す母。口元がゆがんでいる。
容子 :今、知らせがあったの。おじいちゃんが亡くなったって。
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