五月の風吹く空に
「五月の風吹く宇宙に」 作:結城 翼
☆キャスト
女1・ジョバンニ・他・・・・・・・・・
女2・カムパネルラ・母・他・・・・・・
探偵・父・他・・・・・・・・・・・・・
★プロローグ
暗黒の大宇宙。星々はかそけく輝き、絶対0度の中を銀河鉄道は疾走する。
何もない虚無の空間を流れ続ける宇宙気流がある。時の彼方から聞こえてくる音がある。吹き渡る風の音。音は大きく なりやがて消えて行く。溶明。
桜が散る。はらはらと散る。
懐かしい情景。どこかの庭だろうか。
少女が二人椅子に座っている。一人は多分帽子をかぶって本を読んでいるだろう。
女2、帽子をくるくるまわす。テーブルに投げた。
女1スプーンで紅茶をかき混ぜる。
女2 :暑いわね。(と、上着を脱ぐ)もう、五月?
女1 :いいえ、四月でしょ。
女2 :そうだったかしら。(と、立ち上がり上着を椅子にかける。)
女1 :(一口飲んで)甘すぎる。
女2 :ブランデーでも、たらしたら。
女1 :よっぱらっちゃう。
女2 :いいじゃない。時間はあるわ。(そこらあたりを歩く)
女1 :四月も終わるのに?
女2 :七月までにはずいぶん間があるわ。
女1 :それまでずっと酔っぱらってるわけ?
女2 :春の魔力にね。・・・(ハミングしながら少し踊ってみる)
女1 :(冷たく)男の子のようにはいかないわ。
女2 :そうかな?
女1 :そうだったじゃない。
女2 :いつ?
女1 :(答えず)・・・走っていったわ。ずっと石畳が続く道を。そうしていつも街角を曲がる。(促す)街角を曲がる。
女2 :街角を曲がればもう一つの街角があり、
女1 :又街角を曲がれば、もう一つの街角があり、
女2 :真っ直ぐにいくと、桜の花びら散る大きな屋敷があるだろう。
女1 :黒い犬と麦わら帽子を手に持った少年が涼しげに挨拶をするはずだ。
女2 :グーテンモルゲン!
女1 :グーテンモルゲン!
女2 :鉄柵に囲まれた町の一角に。
女1 :止まってしまった時間がある。
女2 :街角を曲がれば、君は見るだろう。
女1 :街角を曲がれば。君は聞くだろう。
女2 :いつもゆく、街角を曲がれば。
女1 :街角を曲がれば・・街角を曲がれば・・・何を見たのかしら・・覚えてない?
女2 :さあ。
女1 :・・・やめましょう。つまらない。
女2 :(動きをやめて)のどが渇いたわ。
桜が散る。
女1 :ちょっと。
男がやってくる。
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