私を月までつれてって
「私を月までつれてって」
                作 結城 翼

☆登場人物
恭介・・・・・・・・・・
イオ・・・・・・・・・・
赤城・・・・・・・・・・
伴響子(回収屋)・・・・
権堂  ・・・・・・・・
財前静香(逃がし屋)・・(男でも女でもいい)
解体屋・・・・・・・・・(男でも女でもいい)
安達 芳野・・・・・・・
島崎(刑事)・・・・・・
松島(刑事)・・・・・・(男でも女でもいい)
事務所の男・・・・・・・(王とかねていい)
女1・・・・・・・・・・
王(ワン)・・・・・・・
移植された臓器を追跡する女・・(女1とかねていい)


Ⅰ プロローグ

        懐かしい「私を月まで連れてって」が、ものうく流れる。
        斜めから差し込む黄色い光に煙る事務所らしい部屋。
        男と女がいる。

男  :というと何。君は命を売ってでもお金がほしい・・・
女  :・・・。
男  :目や腎臓程度ならわからんでもないけど。・・・心臓だよ。心臓。死んでしまったらもとも子もないでしょうが。え。
女  :・・・。
男  :それとも・・これは新しい自殺の手段という訳?
女  :いいえ。
男  :おかしいねえ。
女  :そうでしょうか。
男  :おかしいとも。あんたのような若い人がこれから先いくらでもあるはずのすばらしい人生を・・・えっ。
女  :けしてくれません。
男  :なんだって。
女  :その曲。きらいなんです。
男  :えっ。ああ、これね。きらいかね。私はすきだけど。ま、ひとそれぞれだし・・・。
女  :おねがいします。

        男、立ってスイッチを切る。曲止む。男、そこらを歩く。

男  :悪いことはいわない。考え直した方がいい。それに審査は通らないよ。
女  :ルートがあるってききました。
男  :ほう。誰に?
女  :・・・
男  :仮にあるとして。・・どうして心臓なの。
女  :お金がいるんです。
男  :肝臓なんかもいい金になるよ。
女  :とてもたりません。
男  :そんなにお金握ってどうするの。生きていてこそのお金だろう。
女  :静かな場所がいるんです。
男  :静かな場所?
女  :土地を買うんです。
男  :家を建てるならますます命があればさ。
女  :家なんて建てません。
男  :なら、何で買うの。
女  :・・・
男  :まっ、それはおたくの勝手か。・・くどいようだけれど考え直すつもりはない?
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