THE WIND FROM SILENCE
女6人バージョン
「THE WIND FROM SILENCE」
原作 宮沢 賢治「風野又三郎」
作 結城 翼
☆登場人物
又三郎・・・・・
先生・・・・・・
未来・・・・・・
一郎・・・・・・
秋世・・・・・・
冬美・・・・・・
Ⅰプロローグ
闇の中。二百十日の風が吹いている。溶明。
教室のようだ。先生が階段の上で向こう向きになってぼんやり窓の外を見ている。
秋世はひたすらポテチを食べている。
冬美はチックのように衣服のゴミやほこりを払っている。。
未来は猫のぬいぐるみのクロベエに話しかけている。
一郎は先生をみている。
先生はまだ窓の外を見ている。
やがて一郎が声を掛ける。
一郎 :先生、始めてください。
先生 :ん?
秋世 :(ポテチを食べながら)またですか。
先生 :また?
未来 :(猫のぬいぐるみに対して)ぼんやりして。ねえ。クロベエ。
秋世 :寝ちゃだめですよ。(くっくっと笑い声。ポテチを又一枚)
先生 :聞いていたの。
秋世 :は?(と一瞬食べるのを止めるが、すぐまた食べ始める)
先生 :風をね。
一郎 :風?
先生 :そう、風よ。一郎は風を見たことがある?
一郎 :さあ。
先生 :秋世は?
秋世 :(食べて)見ました。
先生 :ほう。・・なるほど。冬美は。
冬美 :(ほこりを払って)みました。
先生 :ありがとう。けれど君たちは心優しい立派な嘘つきね。
秋世、うそついてないよと口とがらして、またポテチを一枚。
先生、階段を下りながら。
先生 :人は風を見ることなんかできない。けっしてね。
冬美 :でも、風は・・。
制して。
先生 :わかってる。風に揺れる樹の枝、顔を柔らかくなぶるそよ風。そういいたいんでしょ、ちがう?(うなづく生徒たち)でも、それは、単な る風の影。(影?と誰かがつぶやいた)そう、風そのものじゃない。風の本体は透明よ。人間には見ることはできない。私たちにできるの は、せいぜいかすかな風の声をきくことだけね。
未来 :(猫に対して)風の声?クロベエ、風の声だって。
先生 :そう。未来。だから、一本の樹に耳をそばだてる。吹き渡っていく風の声を聞く。(ほら。と声を聴く。)・・・二百十日。快晴。気温二 十八度。蝉たちがまだ夏だと歌っているわ。
一瞬、秋世、未来はそれぞれ食べること、話しかけることを止め聞き入ろうとする。
一郎 :(断ち切るように)今日は快晴。気温28度。風力ゼロ。・・風は全く有りません。
再び、食べながら。
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