i・・最後の遠足
「i・・最後の遠足・・」
作 結城 翼
☆キャスト
カケル・・・・・・・・・
カヲル・・・・・・・・・
探し屋・父・・・・・・・
議長・先生・・・・・・・
天文学者・青山・・・・・
地質学者・蜂屋・・・・・
医師・・・・・・・・・・
看護婦・・・・・・・・・
母・・・・・・・・・・・
監視人・・・・・・・・・
☆プロローグ
監視人が通る。ライトが通り過ぎる。
雨が降っている。まとわりつくような、だが、どこかなつかしいような雨。
天球図によって閉鎖された、ぼんやりとした空間にカケルがいる。大きな画面にゲームが音もなく写されている。鏡の中に無数のカ ケルがいる。ふたたび、ゆっくりと監視人が通ってゆく。監視人、ライトでカケルの在室を確かめ、影のように去る。金属のドアが 閉まる音が、大きく響く。カケル、一心に地図を作っている。
電話がなる。声が聞こえる。
カケル:もし、もし。
声 :私はあなたに会いに行く。
カケル:えっ?もし、もし。もし、もし。・・。
電話、切れる。雨音がやや激しくなる。窓を開ける。夜の闇が広がる。
カケル:また、雨・・・。
カケル、雨の彼方にある何かを見ようとする。
カケル:雨の地図。晴の地図。・・・メルカトール、モルワイデ、ボンヌ、サンソン。地図の図法。ああ、いっぱい在る。僕の地図はどれだろう。・ ・・北緯35度。東経140度。縦軸に人生。横軸に時間。先生はそう言った。
金属の扉が開く音。
雨の日の授業が浮かぶ
青 山:おはようございます。
先 生:おはよう。雨だな。先生は雨が好きだ。青山、お前はどうだ。
青 山:嫌いです!
先 生:そうか。先生は雨が好きだと言っているんだ。青山。お前はどうだ。
青 山:好きです!
先 生:ようし。私はお前が好きだ。蜂屋。
蜂 屋:はい。
先 生:何の時間だ。
蜂 屋:道徳です。
先 生:ねるなよ。
蜂 屋:はい。
先 生:今日は人生について語る。カケル。海を考えよ。
カケル:考えました。
先 生:ようし。大きな、大きな、何もない海を考えよう。そのほかには、何もない。大きな大きな海だ。青山。
青 山:はい!
先 生:海は好きか。
青 山:好きです!
先 生:私は嫌いだ。
青 山:もとい、私も嫌いです!
先 生:それでいい。よし、それでは海に線をひく。いいな、おおきく、一本の線をひこう。蜂屋、きいとるか。
蜂 屋:はい。
先 生:こうして水平線をひく。大きくだ。何がある。青山。
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