筒井
桜魔刻美野道行
「筒井・・桜魔刻美野道行」      結城翼
         
☆キャスト
    筒井・・・・・・   
    鬼童丸(夫)・・      
    貞時・・・・・・
    吉野・・・・・・
    宮木・・・・・・
    萩丸・・・・・・
    夕霧・・・・・・
    霞・・・・・・・
    月彦・・・・・・
    星彦・・・・・・
    雪彦・・・・・・
    花彦・・・・・・
    風彦・・・・・・
    紅葉(くれは)・
    領民達・・・・・






☆プロローグ

        闇の中から、螺旋のようにゆるゆるとめぐる音楽が生じる。重なって玲瓏たる鈴の音。空には満月のような木ノ実。不思議な光の        中、重なりあう、桜の樹々。緋緋として舞う花弁。艶やかな緋もうせん。くるくるともつれるように、ゆっくり舞う異形の星彦た        ち。鈴の音が再び密やかに重なる。女がいる。星彦たちには気づかない。

女  :あなたがしゅろうのかねであるなら わたくしはそのひびきでありたい あなたがうたのひとふしであるなら わたくしはそのついくであ    りたい あなたがいっこのれもんであるなら わたくしはかがみのなかのれもん そのようにあなたとしずかにむかいあいたい たましい    のせかいでは わたくしもあなたもえいえんのわらべで そうしたおままごともゆるされてあるでしょう ひとつやねのしたにすめないか    らといって なにをかなしむひつようがありましょう ごらんなさいだいりびなのように わたくしたちがならんですわったござのうえ      そこだけあかるくくれなずんで たえまなくさくらのはなびらがちりかかる  

        緩やかに舞い続ける星彦たち。やがて女は気づくだろう。鈴の音がひときわ高くなる。

女  :だれ?
星 彦:鈴の音が流れるよ。 
月 彦:流れるよ。星の川を流れるよ。
女  :だれ?
雪 彦:お前の心を食ってやろ!(他のもの「食ってやろ」ささやき声)
花 彦:お前の心を食ってやろ!(他のもの「食ってやろ」ささやき声)
女  :鬼?
星 彦:鬼だって・・(他のものさんざめく、笑い声)
風 彦:鬼だって・・(他のものさんざめく、笑い声)
女  :違うの?
月 彦:恋の木ノ実がみのります。
雪 彦:恋の木ノ実がみのります。
女  :恋の木ノ実?
星 彦:美野(よしの)が淵の
花 彦:紅葉(くれは)の姫の
雪 彦:申すよう。
風 彦:申すよう。
星 彦:十月十日(とつきとうか)の月の夜。           
月 彦:四十九日の星の夜。

        星彦たち踊り早くなる。

花 彦:鈴の音を鳴らせませ。
雪 彦:鈴の音を鳴らせませ。
女  :こうか?
風 彦:鈴の音が鳴りました。
花 彦:天の川を流れます。
女  :こうか?
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