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M.O.E.（３人用）

　　　Ｍ．Ｏ．Ｅ．

作　伊藤　翔悟 respect for bnnmn

出演　須田　漫画雑誌編集者。金本の担当。
　　　金本　漫画家。
　　　ジェシカ

最後に入る、「天声１，２」は、音響として台詞を流してもらいます。

須田　　うーん…
金本　　どうですか。今週は結構、力入れたんですけど…
須田　　んー…まぁ、いいよ？いいと思うけど…やっぱり、今一歩魅力に欠けるんだよなぁ。
金本　　魅力…ですかぁ…
須田　　これ見てくれる？(金田に紙を渡す)先週集計した、うちの雑誌の人気投票の結果。現在うちの雑誌で連載されてる漫画の本数が１６本。で、金本君の漫画は、人気投票第１０位。決して低いとは言わないけど…君の漫画なら、もっと上を狙えるって。
金本　　そうですか…一体、僕の漫画には何が足りないんでしょうか？画力ですか？ストーリーですか？どれも、５年間、みっちりアシスタントとして修行を積んできたつもりなんですが…
須田　　うん。確かに、デッサンはすばらしい。ストーリーも、よく練りこまれてて、読んでいるとどんどん引き込まれていく。
金本　　じゃあ…一体何が足りないって言うんですか？
須田　　萌えだよ。
金本　　萌え？
須田　　そうだ。今の漫画に、萌えは必要不可欠だ。胸を締め付けられて、キュンと来るようなそういう要素。君の漫画には、それが無いんだ。
金本　　胸を…締め付けられる…心臓病か何かですか？
須田　　なんで漫画読んで心臓病にならなきゃいけないんだよ。違うよ。そういう意味じゃなくて…ほら。初恋とか、そういう胸の痛みだよ。
金本　　あー、なるほど！じゃあ、可愛い女の子を、もっと増やすべきだ、と？
須田　　いや、可愛いキャラなら、ほら。このミチルちゃん。もういるじゃないか。だけど、この子は可愛いだけだ。萌えっていうのは、可愛いだけじゃダメなんだよ。それにプラス、キャラ付けが必要なんだ。
金本　　キャラ付け？
須田　　うん。キャラ付けっていうか、少しフェチっぽい部分を加える訳だな。ほら。金本君だって、学生時代にドキッとした女の子の仕草とか、セリフとかあるだろ？
金本　　…あ、中学生の時なんですけどね。それまで全然女らしさを感じさせなかったクラスメイトが、突然ブラジャーを着けてきた時は、こう、ドキッっていうか、妙に意識しちゃいましたね。
須田　　そうそう。そういう事だよ。
金本　　ブラウスって、透けるから、ちょっと見えちゃうんですよね…なんか、慣れてないっていうか、ねぇ…
須田　　君は、その透けた下着にドキッとし、同時に女の子らしさとか、可愛らしさを見出した。ちょっと違うような気もするけど、萌えを感じさせる場面ではあるな。
金本　　わかりました！それじゃあ、そういった萌え要素を、登場する女の子に付加させていけばいいんですね！
須田　　まぁ、そういうことだな。
金本　　なるほど。それなら、登場する女の子のブラジャーをみんな透けさせればいいんですね！
須田　　バカか。お前、ブラジャー透けさせる女ばっかが出てくる漫画って、どんな漫画だよ。変態ばっかじゃねぇか。違うよ。それも萌えではあるかもしれないけど、それは、ちょっと少数派すぎる感じなんだよ。
金本　　うーん…フェチ過ぎる、って事ですか？
須田　　そうだなぁ。もっと、メジャーな萌えを入れてった方がいいと思うぞ。なんか、いい女キャラ居ないのか？
金本　　あ、それなら！(といって、須田に原稿を１枚渡す)このキャラ！この前電車の中で思いついたキャラなんですよ。名前はリリカって言うんですけどね。
須田　　おー…うん。なかなかいいんじゃない？王道路線ていうか、受け入れられやすいデザインだと思うよ。これ、どうやって思いついたの？
金本　　あー、これはですね。電車の中でですね。ヤンジャンを読んでたんですよ。で、あー可愛いキャラいんなぁ。付き合いたいなぁ…とか思って。
須田　　…うん。…それで？
金本　　で、あー、このキャラ本当に可愛いなぁ。って。思って、あー、じゃあ今度新キャラ出すからこの子にしよう、って思ってっすね。
須田　　あー、この子にしようって、思った？
金本　　思ったんですよ。
須田　　え、で、で、で？それで、え、どうしたの？
金本　　で、その場でペンとメモ帳取り出して。
須田　　ペンとメモ帳取り出した。
金本　　でー、ヤンジャン見ながら、それをサラサラーっと…
須田　　あ、写したんだ。
金本　　はい、写しました。
須田　　あー、そう。んー…なるほどねぇー…それじゃあ、このキャラパクりってことね？
金本　　まぁ、平たく言えば。
須田　　あー、そう。それじゃあ、このキャラ使えねぇよバーカ！
金本　　え、え、どうしてですか？すんごい可愛いじゃないですか？
須田　　可愛いとかじゃねえだろ！あのなぁ、パクりってお前最低だぞ？こんなん使える訳ないだろ！
金本　　あー…そうですか…可愛いのになぁ…
須田　　お前が書いた、オリジナルのキャラいないのかよ！？
金本　　あー、あー、います。います。(原稿を渡す)この子。先月ですね、姉に子供が生まれたんですよ。その子がすんごく可愛くて、将来おっきくなったら、きっとこんな子になるんだろうなー、と思って書いたんですよ。
須田　　ふーん。そうなんだ。

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