Fantasy and Fantasy
砂漠に立つ少女
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―砂漠に立つ少女―

登場人物

ナオミ
アリーシャ
ジェイク

女将
客1
客2
ギター男
歌男

男1
男2
ティアマット構成員1
ティアマット構成員2
ガンド
ティアマット総統


                  1

 そこは砂漠である。
 起伏の激しい砂漠に、巨大な建造物の跡が寒々しく立ち並ぶ。
 時間は明け方か。しかしまだ暗い。
 そして、砂漠の真中には、何故か黒いドアが鎮座している。
 そのドアがどこに通じるのかは分からない。
 暗闇の中、少女が一人立っている。
 やがて少女は、自分の物語を語り始める。

少女 私の目の前には二つの世界がありました。ひとつは私が存在し、息をするための世界。
   目の前には様々な人たちがいて、それと同じ数だけ歴史があって、それらは決して交
   錯することは無い。そんな世界。そしてもうひとつは、目の前には存在しないけど、
   私の心の奥底に、確かに存在する世界。目を閉じるとそれは確かにそこにあって、そ
   こには現実と同じように様々な人が歴史を刻んでいて、がむしゃらに生きつづけてい
   る。

 少女のほかにもう一人、女の子が立っている。

少女 私はそこにもうひとつの世界が、確かに存在していることを、みんなに伝えたかった
   のです。そこにも確かにみんなと同じような命が宿っていて、必死で生きていること
   を、みんなに分かってもらいたかった。でもそれは誰の心にも届かない。私の胸の中
   で流れ、消えていくのみでした。

 少女は、一冊のノートを出す。

少女 だから、私は描きました。私の瞼に映るもうひとつの世界の全てを。心の中で感じ取
   り、見聞きした全てを、できる限り細かく、面白いこともそうでないことも、差別せ
   ずに、いちいち細かく書きつづけました。全てはその世界が確かに存在していたこと
   の証明のため。誰かにそれを伝えたかったため。私は心に刻まれる全てを描きつづけ
   ました。

 少女は消える。残るのは女の子。彼女の名前はアリーシャ。

アリーシャ あたしが生まれたのは今から十六年と四ヶ月前。生まれたばかりの私の目の前
      に映るのは母の笑顔。そして砂漠。それからずっと、私は砂漠とともにあった。
      かつて地球上に栄えた文明が、一発のミサイルによって滅びのときを迎えてか
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