さがしもの
さがしもの
                白輝 翼


キャスト
係員
村崎(ムラサキ)男
上名(カミナ)女
八尋(ヤヒロ)男

この作品は、ショート作品を軸に作っています。よって、同じ名前でも性格、年齢、立場、関係などが変わってきます。



  ―0―

静かな音楽が流れる中、係員がゆっくりとした歩調で現れる。

係員 ああ、こんにちは、皆さん。ここへ来たということは、何かお探しなのですか。あら、違う?ではなぜこんな所に?迷って来られたのですか?
   はい、何でしょうか?あー、さすがにここには居ませんよ、小島よしおは。ここで探せるのはそういったものでは無いんです。
   ここは、遺失物係。本来持つべき人と別れたものが、再び主の元へ帰るまでのお休み所。毎日毎日、たくさんの忘れ物、落し物がここへ集まって来るんです。
   すぐに持ち主が見つかる時もありますし、もちろん、もう何年もここにある物もあります。どうです、少し見ていきませんか?ほら、例えば、この時計。
   おや、少し遅れているようですね。これはなかなか面白いですよ。

  係員が時計を拾い上げる。
  照明、F.O.

  ―1―

  村崎と八尋が向き合って話し合っている。

村崎 そんなわけ無いだろ!
八尋 いや、でも実際そうなんだから仕方ないだろ。
村崎 ウソつけよ。
八尋 ウソじゃないよ。何でそんなに否定すんの?
村崎 なんで、ってそんな。だっておかしいだろ。
八尋 どこが?
村崎 どこが、って全体だよ。全部おかしいよ。
八尋 そうか?
村崎 だってさ、あるわけ無いじゃん。
八尋 あるわけ無いって言い切れるのかよ。
村崎 ああ、絶対無い。言い切れるよ。
八尋 わかった。そこまで言うならこうしよう。もし仮に俺の言うことが間違ってて、お前の言ってることが正しかったら、すしでも何でもおごってやるよ。
村崎 よーし、その言葉、本当だな。
八尋 ただし!その代わり俺のほうが正しかったらお前は世界のすべてを手に入れろ。
村崎 高いよ、ハードルが!
八尋 なんだ、負けるのが怖いのか?
村崎 そんなんじゃないけどさ、そもそも、絶対にありえないし。
八尋 なんだ、やけに自信たっぷりだな。
村崎 当たり前だろ。
八尋 そんなに俺のことが信じられないのかよ!?
村崎 いや、俺はお前のことが信じられないんじゃない、お前のその話が信じられないんだよ。だから、他の話だったら信じるよ。
   誰も居ない音楽室のピアノが鳴る。うん、わかるよ。4階の女子トイレから女の子の泣き声が。おお、怖いじゃん。
   けどさ、なんだよ、銅像が目からビームを出すって!
八尋 いいじゃん、かっこよくて。あの銅像は戦艦並みのビーム砲を持ってんだよ。
村崎 それって、そこの中庭に見えてるあの像のことだろ。たしか、この学校の創設者って言う。アレがそんな大層なもののわけあるかよ。
八尋 いや、でも実際そうなんだから仕方ないだろ。
村崎 ウソつけよ。
八尋 ウソじゃないよ。何でそんなに否定すんの?
村崎 なんで、ってそんな。だっておかしいだろ。
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