続きのない物語
   ぼろぼろの服を着た少女。
   窓を拭いている。しばらくしてため息をつき、

少女 あーあ。もうやってられないわよ!こんな広い家毎日毎日掃除してたら身が持たないわ。こんなとこ、人なんか入ってこないんだからいい加減にやっとけばいいのよねー。……でも真面目にやっちゃう正直な私。ああ……どうして私ってこう要領悪いのかしら。
声 窓拭き終わったのー?終わったら洗濯物取り込んどいてねー。
少女 はいはい。……何よ。あれしろこれしろって。本当の母親でもないくせに。少しは自分の娘にやらせなさいよね。お父さんが生きてりゃあんな奴ら……。

   再び掃除を始める。

少女 あーあーこんな不幸な少女を見て神様は何も思わないのかなー。あしながおじさん!……とまではいかなくても白馬に乗った王子様!くらい現れて欲しいわよねー。…………あれ?どっちの方が贅沢なんだろ?
   玄関の呼び鈴の音。

少女 はーい。
   少女、袖に駆けていく。
   入れ違いに入ってくる少女。名は早希。

早希 あれ?今誰かいたかな。
千鶴 早希、何やってんのよ。こんな埃っぽいとこで。
早希 あ、お姉ちゃん。いたの。
千鶴 いたのってあんたねえ……。
早希 お姉ちゃん、ここ来たことないよね?
千鶴 あるわけないでしょこんな埃っぽい……
早希 じゃあこれ誰が出したんだろ。

   早希、バケツを示す。

千鶴 前の持ち主じゃないの?何か色々家具とか残ってるし。
早希 前住んでたのって私たちじゃないの?
千鶴 私たちの後、1回誰か住んだんだって。その人のでしょ。
早希 でも水入ってるよ。
千鶴 雨漏りでもしてんじゃない?
早希 あ、なるほど。
千鶴 もう出ましょうよ、こんなとこ。埃っぽくて……。
早希 お姉ちゃんそればっかり。
千鶴 私はね、デリケートなの。真っ黒クロスケ出ておいで、なんて言ってられないの。
早希 真っ黒くろすけ?
千鶴 あんた知らないの?有名よ。
早希 うそ。何なの、それ。
千鶴 えーとね、屋根裏とか埃っぽいとこに住んでる生き物で、呼ぶと出てくるの。でも捕まえたと思ったら消えちゃってるのよ。
早希 そんな生物ホントにいるの?
千鶴 ばっかねー。お話の中のことよ。あんたホントに知らなかったの?トトロも見たことないの?
早希 トトロ?
千鶴 となりのトトロよ。あーあれ見てないなんて。駄目ね。トトロはアニメの王様よ。
早希 ええ?
千鶴 今度ビデオ借りてきなさい。私も見るから。
早希 お姉ちゃんが見たいだけじゃん。
千鶴 違うわよ!私は何回も見たんだから。あんたも見るの。
早希 面倒くさいなあ。
千鶴 見なさい!
早希 はーい。

   二人、袖に引っ込む。
   すぐに早希、出て来て、

早希 真っ黒クロスケ出ておいでー!
少女 はーい。

   少女、荷物を持って入ってくる。

早希 だ、誰?
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