妖霊星
〜狂言『茸(くさびら)』から
妖霊星 ver0.8β (狂言「茸-クサビラ-」より) 作:白神貴士
登場人物
女
呪い師
妖霊達(4名〜8名以上推薦)
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比較的リアルな6畳くらいの部屋。
生活に疲れた様子の女性が帰宅し、赤い襦袢を纏って布団に入るまでを
無言で描写する。
ただ、女は能面を付けている。
頃は弥生の花の春
庭の桜も息苦しきほどに咲き乱れ
はらはらと花びらを散らして
夜目にも白く千万の吐息を漏らす
ただならぬこの夜の気配かな、
あばら家に住まう女、闇の中に寝具を敷き、身を横たえては居れど
赤い襦袢の中のいと白き裸身に、春情の籠もりてなかなかに寝付かれず
意を決し、昔肌を合わせし男のことなぞ瞼に描き
自が指を操りて、我が身を慰めんとぞ…
その指がついと止まった。
気を遣ったのではない証しに、眼を見開いたその顔には驚きの様が浮かび
その視線の先、闇から溶け出すように現れし異形の影が
女をただじっと見つめて居る。
…女の叫びが夜に木霊して…
暗転。
女、見るからに怪しげな着飾った呪い師を部屋に招き入れ
呪い師、わざとらしい勿体ぶった足取りで入ってくる。
呪い師中央でつと止まり、辺りをゆっくりと見回してニヤリと笑う。
呪い師
「これはこの辺りに名高き陰陽師、安倍川の百痴と申す。
我が見立てに拠れば、この屋敷には妖しき物の怪が取り憑いて居るぞ!
ほれ、あそこ!あそこ!ここもじゃ!」
三方を指さすが、指さされなんだもう一方から妖霊が現れる。
小首を傾げる女に
呪い師
「そなたには見えぬか?まず無理もない。
これ深山に籠もり神仙と交わりて、30年の修行の後に法力を授かったワシにして
初めて、その輪郭をうっすらと捉えるという大変な術、素人には見えぬが道理と
いうものじゃ。
ふむふむ…これは西の空に架かっているあの妖霊星…帚星の祟りじゃな。
とりあえずの魔除けとして…」
懐から怪しげなる札を取りいだして
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