修羅と天使

修羅と天使



端(はた) 真(まこと)  短大生
藤崎(ふじさき) 彩(あや)香(か)  大学生
竹井(たけい) 正幸(まさゆき)  浪人生

大槻(おおつき) 歩(あゆみ)  医師
柏井(かしわい)  刑事

大槻(おおつき) 瞳(ひとみ)  大槻プロダクション次期オーナー

シュラ/柴野  阿修羅道から来た男
メグ  自称・天界からの使者






舞台には何もない。
端が一人、浮かび上がる。

端   日本人は完璧に無宗教。僕はそう思っている。クリスマスにはよく知りもしないキリストの誕生祝だと言って、なぜか僕がプレゼントをもらう。ひいじいちゃんの葬式では坊さんがちゃんとやってくる。でも、おばさんちの方では「安らかに」って彫られたでかい石一つ置いただけで、なんとか家の墓、とか何も書いていない。友達の一人に、変な新しい宗教にひっかかってるやつがいて、毎日手首につけた腕輪みたいなのをさすってる。でもそれ、露天商が300円くらいで売ってたんだよな。…ああ、でも。前言撤回、無宗教というより何でもあり、が正しいかな。決まった一つがないことは、ある意味自由だ。でもそのかわりにインチキなやつらもたくさんでてくるってことだ。とはいえ、僕はそんな呑気な日本が嫌いじゃない。おかげさまで色んな考え方を客観視できるってことだから。

舞台は次第に現実世界へ。
     
端   この冬、僕はとある宗教のはしっこの方を、少しばかりかじる経験をすることになった。流れ星みたいにあっというまに過ぎ去ったそれは、僕の頭の中からも、その記憶すべてを消し去ってしまった。だから、春先の僕は何も知らない一学生として生きている。
竹井  端ー!
端   残っているものといえば、何かがストンと抜け落ちたような感覚と…。   
竹井  おーい!

竹井と藤崎が来る。    

竹井  端!何やってんだよ。   
端   うお!びっくりした。
竹井  は?大丈夫かよ。
藤崎  お昼行かない?どうせまだなんでしょ。
端   ああ、柴野のこと待っててさ。
藤崎  えー、またあいつのこと気にかけてたの?何度も言うけど、カンジ悪いからやめたほうがいいよ。
端   そんなに悪いかなあ。
竹井  早く行こうぜ、俺ハラ減ったよもう。
端   あとから来るかなあ。

三人、去っていく。

街中。風の音。
道を歩く人々が、その風に切り裂かれて倒れていく。
走りぬける影。立ち止まると、刀を持った男。返り血と困惑したような顔。
男は多くの人間を、手にした刀で斬っていく。
暗転。




端がくる。看板をながめて。

端   メインの棟はどれだ?(後ろを向いて)図書館。ここが図書館…。この真ん中のでかいやつかな。
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