信長
1998年度版
信長秘宝館昇天堂一座1998年特別公演
「信長」 ver.5.0
作 白神貴士


 “プロローグ”
 織田信秀=信長の父親の葬式。正面に信秀の巨大な遺影がある。信長と平手政秀、家来数名がいる。読経(般若心経)の声。シンクロして信長のぼやきが聞こえる。
信長「肝心なのは親父どーのが仏の教えを信じちゃおらんけ、わしも線香臭いのはだいだいきらいということじゃあけえ、こーんなとーこに居る気はないけえ、とっととかえるでおさらばするでえ・・・」

 信長、立ち上がる。
信長「もういやだ!親父は神様を信心しとったで、仏なんぞに葬式されても喜ばんわい!政秀、俺は帰るぞ!」
平手「信長様、これも時代の流れです。若殿もこの爺のように仏信心なされませ!御味方が増えまするぞ!子供の頃からお世話をしてきた、この平手政秀の言葉信じていただけませぬか!」
信長「いやだー!」

 と灰(細かい紙吹雪がよいか?)を撒く。逃げ出す、が、紐が付いてて引き戻される。慌てて、辺りを片付ける者達。
平手「そんなことでは立派な領主になれませんぞ!親父様は仏信心も神信心もこだわりなく、有力者の娘たちを側室に迎えたではありませぬか。あなたのお母様もこの爺の、仏信心の家の娘ではありませぬか!」
信長「ワシは領主になどならんわ!」
平手「では何になるのです。」
信長「俺は・・・・・・・」
家来達「俺は?」

 と詰め寄る。
信長「俺は・・・・・座長になる!」

 とミュージックスタート「TANK」
 家来達、座員に変わる。
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“踊る信長”

 信長の新猿楽一座が踊る。ワンマン座長の信長、大道具もこなすコメディアンの籐吉郎=通称“猿”、爺臭い顔ゆえの脇役=二郎三郎、期待の新人=蘭丸、等々が踊る、踊る、決める。パチパチパチ、拍手しているのは座長・信長只一人。

二郎三郎「こないに山奥のカボチャ畑で稽古ばかりしておっても飯の種にはなりませぬぞ。」
信長「その通り。さて、どうした物かのう・・・」
蘭丸「あの・・・カボチャ喰ってもいいですか。」
二郎三郎「お前、さっきも喰ったろう?生はやめておけ。」

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“奇蝶MYL0VE”
猿「奇蝶様おなり!」

 信長と蘭丸を除く座員達、さっと低くなる。
蘭「奇蝶様とはどなたで御座ります?」
猿「何じゃ、まだ知らんのか新入り。美濃のお金持ち、信長一座の一番のご贔屓様よ!ささ、頭を低うせい。」

 金持ちの道楽娘=奇蝶登場。供にインテリ執事=光秀を連れている。
信長「現れた瞬間から、あなたの背景には空一杯に真紅の薔薇が咲き乱れている。風は七色の雲を運び、大気は恋の色に香っている。あなたは私の女神、恋の情熱そのものだ。カモン!奇蝶マイラブ・・・・」
奇蝶「・・・信長、マイ・ダーリン!」

 と人目もはばからぬラブシーン。当てられる座員一同。
奇蝶「みんなどうして浮かぬ顔をしているの?」
信長「興行が打てなくてな」
二郎三郎「座長の猿楽はあまりに新らしすぎて、どこの神社にも呼ばれないのです。」
猿「お寺のお呼びは座長が断っちゃいますし・・・」
信長「わしゃ、仏は嫌いじゃ!」
蘭丸「お腹が空いております。何でもいいですから、何かお仕事ありませんでしょうか・・・」
奇蝶「可哀想・・・・こんなに素晴らしい一座なのに。・・・いいわ、私に任せて!・・・とりあえず、これで腹ごしらえをしておいて!」

 と、金袋を出してみせる。
座員達「うおおー!」

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