ちっちゃな太鼓の涙と
京の演劇活性化ブログラム・合同創作劇上演用台本
ちっちゃな太鼓の涙と 作 田辺剛

【登場人物】
《町の人々》[鈴木家]孝男(父・町内会長)/正美(母)/富菜(長
女)/翼(次女)/瞳(三女)[瞳と翼の友だち]星/佐知子/久美[そ
の他の人々]厚志(富菜の恋人)/中川(佐知子の母)/良子(教師・
瞳の担任)
《劇団「おとぎ座」の人々》ママ(座長)/ララ/チュル/チャル/ム
ー/ヨッツ/ヤッツ/コン/カン/タロウ

舞台はある小さな町の神社の境内。時はそのようなところで子どもたち
が日が暮れるまで遊んでいる時代。そのひらけた場所は森に囲まれてい
て、また地域の人々は抜け道をするのによく通る。


瞳が一人で遊んでいる。棒で地面に絵を描いている。そこへ大きなリュ
ックを背負ったカンがやって来る。カンはキョロキョロと周りを見てい
て誰かを探しているようだ。また一方からは瞳の担任である良子が通り
かかった。

良子 鈴木さん。

瞳は一度良子を見るがまた一人遊びに戻る。

良子 (辺りを見て)一人?
瞳 ……。
良子 なにを描いてるの?

良子が近づいて絵を見ようとすると瞳はそれを消してしまった。

良子 もう暗くなるし、遅くならないようにね。
瞳 ……。
良子 じゃ、また明日学校でね……(と去る)

良子が去る頃にはカンもどこかへ行っていた。瞳は絵を描くのをやめて
他の一人遊びを始める。少し離れたところに現れたのは星、佐知子、久
美の三人だ。

星 あ。
佐知子 やっぱり。
久美 なにしてんの?
星 遊んでるんちゃうん?
佐知子 一人で?
星 行こうか。
佐知子 行く?
久美 別にもうええねんけどな。
星 そんなんあかんって、一度ちゃんと言っとかんと。よし、はい。(と佐知
子を押す)
佐知子 え、もう?
星 だって今しかないやん。
佐知子 そうやけど。
星 ばしっと一言、言ったって。
久美 がんばって。
佐知子 うん……
星 がんばれ。
佐知子 ……なんか、お腹痛い。
星 は?
佐知子 代わって。
星 なんでやねん。
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