お前が邪魔で勉強が出来ない 男×女Ver. (20分)
   男が勉強をしている。

   女が入って来てうろうろ。
   男に顔を寄せる。近過ぎる。鼻息がうるさい。

男 もう、何だよ?
女 あなたのいとこです。お忘れで?
男 何しに来たの。
女 何って事ないわよ。いいじゃない、様子を見るくらい。ケチ。
男 別にダメなんて言ってないだろ。
女 言った! 言いました! 心で。ハートで。
男 なんで言い直したの。
女 ほら、あんた書ける? ハートって。ハート。
男 自分は?
女 あ、書けないと思ってるでしょ。
男 うん。
女 ハートね。ハート。…ハ、ハってHA(エイチエー)? 
男 ローマ字の時点で怪しいじゃないか。
女 いいのよ、私は飛び級だから。
男 意味が分からない。
女 あら、飛び級っていうのはね…、
男 違うよ。飛び級は知ってるの。
女 ああ、そう。HA(エイチエー)でしょ? HA(ハァォ)。 
男 発音の問題じゃないから。しかもそれおかしいし。
女 大事でしょー、発音は。HA(ハァォ)。
男 もういいから。集中出来ない。
女 ないのねー、集中力。
男 お前に乱されてんだよ!
女 ちょっと、仮にも男女の間柄で「乱される」とか言わないで。近所の人が聞いたら
  どうするの? 井戸端会議で噂されたらすぐ広まるんだから。
男 そのまま言えばいいだろ? いとこが受験の為に上京してきてますって。
女 そんな話は嘘に決まってるの。
男 事実だ。
女 日本の法律ではあんたの進学は許されてないわよ。
男 なんでだよ! オレ個人だけの為に作られた法律なんかねーよ! まず大学行っ
  て、その後で資格を取る必要があるんだよオレは。
女 おじさんの仕事を継ぐんだっけ。なんの資格?
男 不動産だよ、不動産。宅地…なんだっけな? 宅地…、宅地なんとか。
女 あぁ、葉っぱ?
男 それはパクチ―だな。
女 違うの?
男 違うよ。なんで不動産に薬味が必要なんだよ。
女 知らないものー、不動産なんて。
男 それだって薬味が必要な業種だとは思わねーだろ。もう…。あ、そうだ。テレビ。
女 テレビが何?
男 音、小さくしてもらっていいかな? 気が散るわ。
女 音を…小さく? 音を、小さく?(おにぎりを作る時の手の形)
男 違うよ。音量を下げて。
女 音を…下げる? 音を、下げる?(「あなたがこんなに小さい時に…」の手の形)
男 位置じゃねーよ! もう、だったらテレビ消せ。
女 テレビを…消す? こう、テレビがあって、それをないものに…?
男 電源を切れ、と!
女 電源を…切る? コードを…、
男 分かれ! もう…。
女 わざとよ。久し振りに会うから会話が欲しいと思ったんじゃない。
男 勉強の邪魔をしてまで求めるな。
女 じゃあ一緒に勉強しよう。ね、ならいいでしょ。私が教えるから。
男 お前に教わる事は何もない。
女 はいそこ、失礼な事言わない。人という字は人と人が支え合って出来ています、と
  言います。でもどう見ても片方こっち側の人が寄り添って楽をしています。
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