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リアルタイム

【登場人物】
　本橋麻里（もとはしまり・女）
　寺田桜子（てらださくらこ・女）
　小野寺歩（おのでらあゆむ・男）
　林弓哉（はやしゆみや・男）
　目黒萌（めぐろはじめ・男）

　　高校、あるいは大学か専門学校の演劇部（サークル）の部室。
　　（上演する集団にとってイメージしやすい設定にアレンジしてください）
　　なんとなく散らかった狭い部屋。
　　折りたたみ椅子と折りたたみ式の机。
　　机の上には何冊もの本、脚本、筆記用具などの他、ジュースのペットボトル、スナック菓子の箱などが無造作に置かれている。
　　壁には月間予定表が貼られているが、あまり使用されている様子はなく、ほとんどスケジュールは記入されていない。

　　部員・本橋が机に向かったまま居眠りをしている。
　　その周囲では彼女の夢の世界が描かれている様子。
　　どこからともなく出航を告げる声が聞こえてくる。

寺　田　おーい、船が出るぞぉー！ふ・ね・が・で・る・ぞ・ぉ！
小野寺　みんな乗ったか？乗り遅れた奴は置いていくぞ！
　林　　ちょっと待って！吟遊詩人の姿が見えないよ。
寺　田　おーい！詩人！早くしないと船が出るぞー！
本　橋　（寝言）待ってくださぁい！乗ります、乗ります！

　　自分の寝言で目を覚ます本橋。
　　夢の世界は波が引くように消えていく。

本　橋　夢、か……。（時計を見て）いけない。もうこんな時間？（伸びをしながら）あー、もう、どうしよう？

　　本橋は立ち上がって、月間予定表に近付く。

本　橋　今日が…ここで（印をつける）……追い出し公演が……ここ（印をつける）。

　　しばらく考え込む本橋。

本　橋　やっぱり……今週中に脚本を決めないと間に合わないわよね。ああ……。何で私なのよ。

　　落胆した雰囲気で椅子に戻る本橋。
　　しばらくボーっとしているが、なんとか頭を働かせる。

本　橋　ええっと……（ペンを取り、ノートを開く）今年度の卒業生追い出し公演、うちで該当する卒業生は……

　　本橋の記述に合わせて姿を見せる寺田、小野寺、林、目黒。
　　本橋が思考をめぐらせている状況が舞台上に具現化されている。
　　以降、本橋がノートを開いて試行錯誤している間、舞台上では彼女の頭の中のイメージが形になって投影される。

本　橋　演出が厳しかった……
寺　田　寺田桜子です。
本　橋　迫力ある演技の……
小野寺　小野寺歩です。
本　橋　面白い脚本を書く……
　林　　林弓哉です。
本　橋　ほとんど来てなくて印象の薄い……
目　黒　目黒はじめです。
本　橋　（彼らの姿を数えて）メインキャストが４人か…。男子が３人、女子が…ひとり……。そう言えば、うちのサークル、もともと人数少ないけれど、特に女子が少ないわね……。
寺　田　いい、麻里ちゃん。自信を持ちなさい。女の方が舞台に向いているのよ。着飾って、自分をよく見せたい本能が女性にはあるの。そして、物語を語りたい、人々に伝えたいという欲求も女性の方が強いのよ。
小野寺　おいおい、寺田。それは差別発言に聞こえるぞ。お前は田島陽子の弟子か？
寺　田　いちいちうるさいわね！私が必死になって女子部員を引き止めてあげてるのがわかんないの？
小野寺　いいじゃねえか。女が足りなきゃ、また林が女装してくれるよ。お前がやるよりよっぽどましかもな。

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