ぱちもん
ぱちもん
作・石岡克
キャスト
小暮
目黒
大木
舞台はあるアパートの小暮が借りている部屋の居間。居間はそれほど広くなく、玄関と
台所、洗面所に通じている。その居間には、中央にちゃぶ台が一つ、隅っこの方に電話と
CDラジカセが置いてある。ちゃぶ台の前に座った目黒が、くつろいだ様子でカップラー
メンを食べている。目黒、不意にリモコンを手にとり、テレビをつける。何回かチャンネ
ルを回して、気に入った番組があったらしく、リモコンを置く。それからしばらくの間、
目黒はテレビを見ながらカップラーメンをすすることに夢中になる。と、そこに小暮が帰
って来る。
小暮:……
小暮、ため息を吐きながら、居間に入ってきたところで目黒の存在に気付く。目黒は気
付かずにカップラーメンを食べながらテレビを見続けている。
小暮:……
小暮、困惑した様子で部屋を出て、表札を確認する。小暮。間違いなく自分の部屋だ。
小暮、何度か表札を確認した後、おそるおそる部屋の中を見る。やっぱりいる。小暮、首
を傾げつつ部屋の中に戻り、靴を脱いで居間に上がる。目黒はまだ気付かず、時々テレビ
の内容に笑ったり怒ったりしながらカップラーメンをすすっている。
小暮:……
小暮、困惑しながらもとりあえず目黒の横に座り、何故か一緒にテレビを見始める。時
々目黒の方をチラチラを見るが、目黒は全く気付いた様子がない。小暮、落ち着かない様
子で体を揺らすが、どうしても声をかけることができない。しばらくして、カップラーメ
ンを食べ終わった目黒は箸を置き、
目黒:ごちそうさまでした。
と、行儀よく手を合わせると、テレビの電源を消し、カップラーメンのカップを持って
立ち上がり、台所の方に行こうとする。小暮、その背中に声をかけようとするが、結局声
をかけ損なう。台所に消える目黒。小暮、また落ちつかなげに体を揺すり始める。その内、
カップラーメンの空を片付け終わった目黒が、背伸びをしつつ居間に戻ってくる。小暮、
それを凝視するが、やっぱり声はかけられない。目黒、さらに首を鳴らしながら元の位置
に座り、ちゃぶ台に頬杖を突いてぼーっとする。小暮、そろそろ我慢の限界なのだが、ど
うしても声をかけられない。その時、不意に目黒が小暮の方を向き、ようやくその存在に
気付く。
目黒:(かなり驚いた様子で)おわぁ!
小暮:ええ!?
目黒:(立ち上がりながら)何ですかあなた!
小暮:え? 僕は(この家に住んでる者ですけど)
目黒:え、だって、さっきまで誰もいなかったのに。いませんでしたよね?
小暮:はい。ついさっき(帰ってきたところで)
目黒:だよなぁ。やっぱり私一人だったよなぁ。あなた誰です?
小暮:いやだから、私は(この家に住んでる者で)
目黒:人の家に勝手に入るなって、お母さんに教えられなかったんですか?
小暮:え? ちょっと待ってくださいよ、それは(あなたの方で)
目黒:あー、そうか! 泥棒ですか!
小暮:はい!?
目黒:いやー、すいませんねうっかりしちゃって。そうですよね、人の家に勝手に入って
くるって、そんなの泥棒に決まってますよね。いや恥ずかしいなぁホント。
小暮:ちょ、違いますって。僕はですね、(ここの家に住んでる)
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