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家族素描

家族素描（デッサン）

登場人物

田中クニオ
クニオの父
クニオの母
クニオの姉
教師
友人１
友人２

　舞台はソファ等が置かれたリビング、ダイニング・キッチン等のある空間。
　そして玄関がある。
　夕方五時半を回った頃だろうか。辺りはかなり暗い。
　が、リビングに明りはついていない。
　廊下の入り口の扉からは明りが漏れている。
　一人の男登場。玄関の外で立ち止まる。
　男は中学校教師。

教師　えーと、「田中」か。ここだな。いやー、すっかり遅くなったな。いよいよ最後の一軒だ。俺の初めての家庭訪間を締め括る最後の一軒だぞ。張り切っていこう!

　教師、何故か準備運動をして、おもむろにチャイムを押す。
　が、中からは何の返事もない。

教師　おかしいなあ。留守かな。

　もう一度チャイムを押す。
　が、やはり何の返事もない。

教師　今日だって言ってあった筈だよな。（上を見上げて）お、二階に電気かついてるぞ。（大声で）御免下さーい、田中さーん!田中さんいらっしゃいませんかー!第二中学の田中でーす。…何か変な感じだな。ま、仕様がないか。すいませーん、田中さーん!

　ドタドタと階段を降りる音がして、廊下の入り口の扉が開き、一人の男子中学生（田中クニオ）がリビングに入ってくる。
　リビングに明りが入る。

クニオ　ったく、誰だよ。
教師　あのー、私第二中学の田中と申しますが、どなたかいらっしゃいませんでしょうか。
クニオ　何だ、アイツかよ。

　クニオ、玄関の扉を開ける。

教師　お、田中いたのか。
クニオ　でっけえ声出すなよ。恥かしいな。
教師　すぐ出て来ないのが悪いんだろ。
クニオ　今誰もいないからさ。
教師　だってお前、今日家庭訪間だって言ってあっただろ。
クニオ　そうだったっけ。
教師　お前な…
クニオ　悪ィ、明日にしてくれねえか。
教師　あのな…
クニオ　俺、もうすぐ塾なんだよ。今宿題やってたとこなんだ。
教師　そんなこと言われたって、先生だって困るんだよ。ちゃんと予定立ててやってるんだから。
クニオ　俺んち一軒くらい、いいじゃん。
教師　そういう訳にはいかないんだよ。先生だって明日は明日でやることがあるんだから。
クニオ　俺にだってやることあんだよ。帰ってくれよ。
教師　帰れって、お前さ、

　と、そこヘクニオの母が戻ってくる。

クニオ　あ、ヤベエ。

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