鎖に繋がれた熾天使
〜私をあの世へ連れてって〜
「鎖に繋がれた熾天使」
〜私をあの世へ連れてって〜
《登場人物》
真実(まこと)
轟 龍一朗(とどろき りゅういちろう)
轟 幸子 (とどろき さちこ)
轟 貴文 (とどろき たかふみ)
ジョン
リンダ
マーガレット
一場
闇。
真っ暗な中に携帯のプッシュ音が響く。
呼び出し音が何回か鳴った後、
「留守番電話サービスにおつなぎ致します。
ピーッという発信音の後にメッセージをお入れください」
ピーッ
(M)バッハの「小フーガ」が入る。
少し遅れて照明フェイドイン
氷の熱さ、又は炎の冷たさを感じさせるような異時限の空間。
いかにも現代の若者といった風な青年真実(まこと)が携帯を握りしめて話している。
まこと もしもし、かんな、ボクだよ。どうして出てくれないの。
君の声が聞きたいんだ。
君のその甘く優しい声だけが、ボクの心を生き返らせることができるんだよ。
あぁ、君をこの手で思いっきり抱きしめてあげたいのに、
どうして会ってくれないの。
どうしてボクを避けるの。
心変わりなんて信じたくない。
君がボクを嫌いになるはずがないじゃないか。
だって僕たちは運命の赤い糸で結ばれているんだからね。
携帯をプッシュする。
まこと かんな、ボクは試されているのかい。
だったら大丈夫。僕の愛は本物だよ。
君はボクにとって特別な女性(ひと)、なくてはならない女性。
かんな、君なしでは、僕はもう生きてはいけないんだ。
君にとっても、ボクは大切な存在だろ。
ううん、君の気持ちは言わなくてもわかっているよ。
君の目を見ていれば、感じるんだ。
ボク達に言葉は必要ないのさ。心の奥で通じ合っているんだからね。
かんな、君にはボクがいなくちゃダメなんだ。
ボクだけが、君を幸せにしてあげられるんだよ、かんな。
携帯をプッシュする。
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