擬似恋愛
─登場人物─
亜樹……徳永亜樹(とくながあき)……高校2年。
悠………徳永悠(とくながゆう)……中学3年。亜樹の弟。
桜………桜(さくら)……コンピュータ。
司………太田司(おおたつかさ)……高校2年。
夏実……間夏実(はざまなつみ)……高校2年。司とは腹違いの姉。
亜樹、舞台中央でパソコンのような物を打っている。
部屋は暗い。
パソコンの傍にはファンタジックな衣裳の少女が
無表情に椅子に座っている。
彼女の名は桜。
亜樹は最後に実行を押して、「ピー」
という音がする。
亜樹 よし。完成。
悠が入ってくる。
悠 姉ちゃーん。出来たー?
亜樹 あ、悠。見て見て。完成よ。三ヵ月かけたプログラム。今年こそ間違いないわ。
悠 それ、毎年聞いてるけど?
亜樹 今年は絶対なの!だって今回の相手は司君よ。私、ほんっきで司君のこと好き
だもの。愛さえあれば叶わないことなんて多分ない!
悠 微妙に弱気だね。
亜樹 うるさいわね。これからこのプログラム、実行させるんだから、あっち行っててよ。
悠 えー。ぼくも久しぶりに桜ちゃんに会いたかったのに。姉ちゃん、三ヵ月もそのパソコン使いっぱなしなんだから。
亜樹 あんたねえ。コンピュータの立体映像になんか会ってどうするのよ。
悠 会いたいの。いいでしょ?
亜樹 仕方ないわねえ。でもすぐ部屋出なさいよ。私のプログラムにはあんたもいるんだから混乱しちゃうわ。
悠 わかってるよ。
亜樹 (気合いを入れて)よし!実行!
突然、明るくなり、桜が立ち上がる。
表情は明るい。
桜 はーい。パーソナルコンピュータアクトレス2190の桜でーす。亜樹ちゃん、悠君、お久しぶりー。
悠 お久しぶりー。
桜 今回は「徳永亜樹のバレンタインラブラブアタック大作戦17歳バージョン」をお送りしまーす。
悠 姉ちゃん、相変わらずそういう題名付けてるの?
亜樹 何よ、あんたこそ自分のプログラムに「受験作戦、楽して取りたい入学資格」とかって名前つけてるくせに。
悠 どっかで売ってそうでいいじゃん。
亜樹 駄目よ、そんなの。せめて「徳永悠の高校入学パラダイス学園計画現役バージョン」とかしなきゃ。
悠 姉ちゃんの趣味わかんない……。
亜樹 何ですって?
桜 あのー。そろそろシュミレーションスタートしてよろしいでしょうか……?
悠 あ、ごめん。ごめん。じゃあ姉ちゃん、今年こそは振られないように頑張ってね。
悠、退場。
亜樹 余計なお世話よ!全く……。
桜 それでは早速プログラムを実行に移しまーす。第一章、バレンタイン前日、舞台は公園。子供たちの遊び声が聞こえます。
人のざわめき音。
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