とりあえず・・・
傾城恋愛学入門〜初級編〜

    傾城恋愛学〜初級編〜


    「とりあえず・・・」
   
   
   
               作 中島奈美


    
   *喫茶店。
    キャリアウーマン風のミニのスーツ姿の女性、小百合が入ってくる。
    待ち合わせていた友達の由美を見つけて、


小百合  ごめん由美、待った?(あわてて席に座る)
     会議が長引いちゃってさ、
     朝から三つもプレゼンのかけもちよ。(得意そうに)
    
    (携帯電話の音)
     あ、またきた!(電話に出る)
     はい小池です。・・・・はい・・・・・はい・・・・・
     え? 大丈夫です。
     クライアント対策ばっちりですから・・・・・
     はい、わかりました、それじゃー四時少し前に・・・
     ええ、失礼します。
    (電話を切る)
     
     たく、お茶ぐらいゆっくりさせてよね。
     電源切っとこっと・・・・・
    (電源を切って、携帯をしまう)
     
     えーーと・・・・・
    (ウェイトレスに)私もホット!
     あ、待って・・・カフェオレにするわ。
    
    (由美に)朝から珈琲何倍も飲んで、何か胃がおかしくって・・・・
     仕事が忙しいのも考えものねえ、
     ほら見て、肌なんかもうボロボロよ。
     
     あ、すみません、(ウェイトレスを呼ぶ)
     灰皿下さい。・・・・・ありがとう。
    
    (タバコを出しながら)
     聞いたわよ由美、保険はいったんだって?
     まさか養老保険とかいうんじゃないでしょうね・・・・・やっぱり、
     ・・・その年で老後心配してどうするのよ!
     え、私?・・・私は入ってるわよ。
     いいの、三十越えたら先のこと考えなくっちゃ・・・・・
     あんたまだ二十代でしょ。
     え、・・・いつ?・・・・
     ほらまだ(数える)6、7、8ヶ月もあるじゃない。
     私なんて、十二月が来たら三十三よ、三十三の大厄!
     もう笑っちゃうでしょ?・・・・・(急にマジになって)
     
     笑い事じゃないわよ!
     明日はわが身よ!(タバコにシュパッと火をつけて吸う)
     
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