浦島伝説
イエスタディ ワンス モア




    イエスタディ ワンス モア
     「浦島伝説」


                   作 中島 奈美

   《登場人物》

浦島   年齢不詳の女奇術師。ウリはナイフ投げ。

文也   浦島の恋人。実は幽霊。その姿は浦島にしか見えない。

慎平   浦島の新しい恋人。神の道を説いてまわる伝道師。

支配人(伍郎) 浦島の出演している劇場の支配人。

マリ   浦島の舞台のアシスタント。

綾香   隣に引っ越してきた若くて可愛い女の子。

山口   天使・・・? 神に仕えるサラリーマン。

先代の浦島  浦島の父親。舞台の上で派手にパーッと消えるという、
       すごい奇術をやったという伝説を残した。
    
   *明かりが入ると、そこは浦島の部屋。
    西日の入るアパートの一室。
    時代は現代なのだけれど、なんとなく七十年代を思わせる懐かしさの
    漂う空間である。
    部屋の中には、ちゃぶ台、扇風機、四本足のテレビ、
    大きめのラジカセ、2ドアで丸いフォルムの冷蔵庫など、
    レトロな物達が並んでいる。
    そして、部屋の隅には、
    古ぼけたトランクが置かれている。

   *浦島が、ちゃぶ台の上にノートを開き、
    そろばんを使って帳簿をつけている。
    時折、大きなため息をつく。
    浦島の恋人の文也が、浦島の様子をチラチラ伺いながら、
    トランクに座って新聞を読んでいる。
    浦島は、相当、機嫌が悪いようだ。

文也  (記事を読みながら、ブツブツつぶやいている)
     ・・・・・フーン・・・・なるほど・・・・・・・
     ヘェー・・・・・(浦島のほうを見る)

浦島  (無視してそろばんをはじいている)

文也   ・・・・・あーあ、最近、何にも面白いことないよな・・・・・
     ま、政治がどうなろうが、景気がどうなろうが、ボクには関係ないことだけどさ・・・・
    (浦島のほうを見る)

浦島  (やはり無視して、そろばんをはじいている)

文也   そう言えば、角のせんべい屋、潰れたんだってね。
     あそこの塩せんべい、好きだったのに、残念だな・・・・・
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