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されど結婚式

傾城恋愛学入門〜初級編〜

　　　　傾城恋愛学入門〜初級編〜
　　　

　　　　　「されど結婚式」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　作　中島奈美

　　バチッとスーツ姿で身を固めたキャリアウーマン風の女性（年齢不詳）が、
　　手に一杯のカタログやパンフレットなどを抱えて、さっそうと部屋に入ってくる。
　　テーブルの向こうには、客が待っているらしい。

吉村　　お待たせいたしました。（荷物をテーブルの上に置いて、姿勢を正す）
　　　　高木様、渡辺様、このたびは本当におめでとうございます。　
　　　　私(わたくし)がお二人を担当させていただきます、
　　　　ブライダルコンサルタントの吉村要(かなめ)です。
　　　（二人に名刺を渡す）どうぞよろしくお願いいたします。
　　　　・・・・・・はい、・・はい、・・・一応課長でございます。
　　　　はい・・いいえ、とんでもございません。
　　　　こう見えまして、かなりのベテランでございますので・・・・・・・
　　　　
　　　　え？　年？　私の年齢ですか？
　　　　そうですねぇ・・・人に言いたくなる年ではございませんねェ、
　　　　その上、自分でも忘れてしまいたいぐらいの年齢です。
　　　　まだ、お知りになりたいですか？
　　　　・・・ああ、そうですか・・あえて申し上げましたら、・・
　　　　花嫁の渡辺様と同年代、いえいえ私のほうが上！
　　　　当然上でございますよ。ほんと、もう・・
　　　　２才も、年上です、はい。（ニッコリ笑う）
　　　　
　　　　えっ・・結婚？　いえ、私、まだ独身でございます。
　　　　残念ながら結婚の経験は、いまだかって一度もございません。
　　　　ですが！
　　　　結婚式に呼ばれた回数なら誰にも負けませんから、
　　　　それは　それは、全国津々浦々、ピンからキリまで見てまいりましたので、
　　　　花嫁様の御友人がどのようなことを思い、かつまた、
　　　　どのようなところをチェックしているかということにつきましては、
　　　　もう熟知いたしておりますので、・・(花嫁の手をガシッと握る)
　　　　大丈夫でございますよ。
　　　　花嫁の渡辺様の悪いようには、決していたしませんのでね・・・
　　　（フフッと不気味に笑う)
　　　　私に、すべてをお任せください！
　　　　
　　　　それでは、まず、式場のほうをご案内させていただきますね。
　　　（カタログを見せる）
　　　　いかがでございますか？
　　　　こちらでしたら、地の利がよろしいので、

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