奇劇
奇劇

キャスト
少年(名前は自由に決めてください)


明転

部屋の中、真ん中よりやや上手側に机。壁に時計がかかっている。バットやら妹からの人形やらがいくつかある。上手側を部屋の奥、下手側の前を玄関とする

少年「(ケータイの着信音)(登場)もしもし なんだ聡美か。あ、この前はありがとな。ほら、1ヶ月くらい前に舞台のチケットくれたじゃんか。そうそう、すっごく楽しかったぞ。お前も見にくればよかったのに。あとさー、誕生日のプレゼントにお人形はやめてよ。男がこんなの飾ってもちょっと気持ち悪いだけだろ。どしたんだよ、なんか暗いな〜。なんかあったのか?そうか。何にもないならいいけどな。え、オレ?大丈夫だってそんな心配しなくてもいいから。
ちゃんと生活してるって。まあ多少きついときもあるけどさ、バイトして何とかやっていってるよ」

携帯で話しながら登場

少年「(話しながら)だから心配しなくてもいいって。大丈夫!兄ちゃんを信じろ!(間)…そんなに信じられないのかよ…(落胆)。んー…そ、そういうお前の方はどうなんだよ!もう14だろ。もう彼氏の1人や2人や3人や4人や5人くらい出来たんじゃねえのか(からかい気味)わーっはははは、え!?…あ、あ、あ、あそっか…、…そうだよな、そりゃそうだよな…。まあ、兄ちゃんは気にしてないからな(人形を蹴りながら)。え?なに?聞こえない。あー、気のせい気のせい気のせい気のせい――(さらに蹴りながら)。だから何もしてないって(まだ蹴ってる)。(しばらくしておさまる)
…んで、どんな奴なんだよ。いや、別に何もしないって、今度帰ったときに面を2,3発殴るだけだから。いや、じょ、冗談だって、冗談。何もしないよ。で、どんな奴?どんな奴?教えてくれよぉ。(適当に相槌)金髪で、ピアスしてる?もろ不良だな…。歳は? 二十歳!?俺より年上じゃねえかよ!仕事は(相槌)薬局で働いてんのか?え、違う?じゃあどこで働いてんだよ。…道端ぁ!?どういうことだよ!(間)いや、だから薬を売ってるのはわかったから、…っておい。まさかよ…。(間)やっぱりか…、何でそんなのが好きになった…。やっぱりそれが理由か…。いや、納得したよ。
…そういや、その母さんは元気か?やっぱどこに行くにもサンダル? そうそう、すぐに脱げるんだよね。しかも本人は気づかないんだよね!ははは で、今度は何に手ぇ染めた?え、畑を耕してる?ああ、そっか、ついにあの母もまともになってくれたか!。 で、何育ててるの?トマト?それともナスかな?  うん。麻にケシに、きのこの栽培も?ちなみに種類は何? ああ、マジックマッシュルーム。そっか、全然変わってねえな…。
(間)…ああ、そう。ついにかけたか、保険金。これで何人目だ?5人目?あ、8人目か(間)もうそんなになるのか。全く、よくばれないもんだよな…。そっか…。さよなら、父さん。
で、その父さんはどうなの?相変わらず手の震えが止まるまで酒飲んでるの? あ、それは前の父さんか。 えと、じゅあ、腕に注射の跡がいっぱいあったお父さん?  それは最初か。うーん、じゃあ…煙草毎日1カートン吸ってたお父さん? それは4人目か  今のお父さんってどんな人だったけ? ああ、そうだそうだ、手首にいっぱい傷のあった人か。で、どうなの?
うん、あそ…。相変わらず…だな。昨日も?あっそ…
え、何?旅行行くのか!?俺にも言ってくれよ。いつ?(間)お、その日オッケー、予定ないよ。で、どこに行くのさ(間)富士山!?山登りか?(一瞬ハッとして)…(少々おびえつつ)行こうって言ったの誰?母さん?(間)あ、そう…。
あ、オ、オレ、や、やっぱいいわ。ちょっと急用が出来…る可能性があるわけでもないわけでもない…(尻すぼみ)。

ちなみにさ…、母さん何を用意してる?
うん、登山用のブーツに、救急セットに、携帯用酸素に、ナイフに、練炭に、ちょっとアーモンドみたいな臭いのする薬に、トリカブトに、手榴弾に、ガトリングガンに、核弾頭……。
うん、うん、ちょっと待とうな…。仮に1億歩譲って…トリカブトまでは許したとしよう、うん。
……手榴弾どっから持ってきた!ガトリングガンはどこから調達した!!そして、何でこの平和な日本に核弾頭がある!!?
え?あ…そっか、そういや3人目のお父さん…背中に般若の刺青があったよね…。小指ちょっと短かったし…。だけど…核弾頭なんかどっから持ってきたのさ?!
(相槌)ちょっと前に、妙な外国人が持ってきた?どんな人よ? うん、眼鏡かけてて、小太りで、なんだかよくわからないけど美人の人を大量に引き連れて来てて、その 人たちから『将軍様』って呼ばれてた……?  そっか……母さんアノ人とも関わりがあったんだ…。

(間)と、とにかく俺は行かないからな。
(間)…お前も早くあの家から脱走しろ。
うん、ああ、おう、わかった。気を付けろよ。人間やめるような真似だけはするな…。
(間)…ま、まあ、つまりは…白い粉には気を付けろ。あと、身の危険感じたらすぐにこっち来い、あの母なら何やるかわかったもんじゃない。
おう、じゃな…(切る)…アイツの将来が心配だ……」

少年「(時計を見る)8時か…、明日試験なんだよなぁ、勉強しなくちゃならないんだよな…、めんどいんだよなぁ……。あー、テレビ見てえな…でも勉強がなぁ…。(下手側に近づき)少しくらいは…(机にいって)
ああ、でも試験が…、…やばいんだよな…。(下手側)でもテレビみたいし…、(机)前回赤点でやばかったし…、テレビ、勉強、テレビ、勉強 だああああ!!!このクソテレビ!!!」(バットを持って下手側に退場)

機械が派手に壊れる音。

少年「(登場)……よし!」

戻る 机に向かう

少年「ふう、さあて勉強勉強(張り切った様子で)」

参考書や辞書などを机に広げて、勉強をはじめる
徐々に徐々に集中力が続かなくなり、ノートを破いて、紙飛行機を折って飛ばし始める。

少年「(だらけた様子で)俺って勉強向いてないな…。(うろうろし始める)だいたい、数学って何?別に習わなくたって死にはしないでしょ、いちいち訳がわかんないんだよ、解の公式とかベクトルとか、円周率が3.14159265358979323846264338327950だとか!数学なんて嫌いだ!見たくない!!つか、消えてなくなれ!!!」

ノックの音 玄関へ
少年「はいはい、誰ですか? (声色を変えて)何処のどいつだよ (扉を開ける) うわ、ちょっと、加藤さん!ここはあなたのうちじゃありませんよ。 無理矢理入ってこないでください。近づくな酒臭い! 待った!!それは家に着くまで我慢してください!!ちょ、ちょ、大家さーん!!!(退場) (袖)この酔っ払いどうにかしてくださいよ、早くし  ないと逆流を起こしますよ!! お願いします。 後は頼みましたよー!!」 
戻る
少年「(息が上がっている)あの酔っ払い親父めぇぇぇ…。今度あったらぶっ殺したるぞ!!
………疲れた…(机に戻って)。おやすみ…」


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