希望〜朗読〜

ある村の、ある青年のお話。。。

背の高いその青年は、いつも笑顔が絶えなかった。
背の高いその青年は、自分が幸せなことを知っていた。
背の高いその青年は、周りから「おめでたい奴」と笑われても、やはり幸せであった。。。

私は聞く。

「君は何故そんなにも幸せなのか?」

と・・・。

背の高いその青年は、やはり笑顔でその理由を語り始める。

「私がまだ少年のときです・・・。」

その背の高い青年が、まだ少年のとき。それでも彼は学校では背が一番高く、皆から「のっぽ」と呼ばれていた。
背の高い少年は、その響きが堪らなく嫌であったが、人を殴ったりはとて
もできない性格だったので、ただただ笑顔でいることにしていた。

背の高い少年の先生は、年老いた優しい顔の先生だ。だが怒るときはとても怖い。怒られた
生徒たちは、神様の天罰を受ける心地になった。

ある日、背の高い少年が一人で教室を掃除していると、年老いた優しい顔の先生が、ゆっくり
教室に入ってきた。年老いた優しい顔の先生は、なにも言わずに前の方にある椅子に座り、
「ふぅ〜」と大きな呼吸をした。

背の高い少年は、なんだか照れくささを感じながら掃除を済まし、先生に「さよおなら」と言っ
て、その体格には似合わない小さな鞄を持った。

年老いた優しい顔の先生は、「待ちなさい。少しお話をしようじゃあないか」と、やはり優しく言っ
た。背の高い少年は、ゆっくり先生の隣の席に座り、「先生、なんですか?」と、その体格には
似合わない小さな声を搾り出した。
年老いた優しい顔の先生は、「君はいつも笑顔でいるが、私には困った顔にみえるんだ」と、き
りだした。さらに年老いた優しい顔の先生はこう質問した。

「君は今、幸せかな?」

笑顔が絶えないが本当は困った顔の背の高い少年ははこう答えた。

「は、はい。幸せです・・・。え〜と、だってお父さんもお母さんも優しいし、犬のジョンもいる
し・・・」

年老いた優しい顔の先生は黙って聞いている。笑顔が絶えないが本当は困った顔の背の高い
少年はもっと理由を言うべきだと思い、年老いた優しい顔の先生に、思いつく限り説明した。

「あと・・・。風邪は全然ひかないし、友達も、ちゃあんといるし・・・。あとは・・・。あ、そう、お父さ
んなんかこの前出世したし・・・。え〜と、え〜と・・・。お母さんが作ってくれるおやつはとても美
味しいし・・・。うん。幸せだと・・・思います。」

年老いた顔の優しい先生は、それからようやく、また話を始めた。

「そうか、君はとてもいい幸せをもっているね。とても暖かい幸せだね。」

笑顔が絶えないが本当は困った顔の背の高い少年は、年老いた優しい顔の先生が何故こん
な話をするのか、皆目見当がつかない風で話を聞いていた。それから、また一呼吸おいて、年
老いた優しい顔の先生は話を再開した。

「だが、君には一つ、足りないものがあるね。」
1/2

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム