酔いどれシンデレラ
酔いどれシンデレラ
脚本・作詞・作曲・編曲 酒井 一成
初演 二〇〇五年八月六日 NeverLand Musical Factory
登場人物
シンデレラ 継母 姉 王子 屋台のおじちゃん 屋台の客
場所
街角の屋台 ただし回想シーンなど多数
一場
屋台で飲んだくれているシンデレラ。
シンデ そりゃね、この年まで生きてればいろいろあるわよ。あ、この年って言ったってまだ
まだぜーんぜん若いからね。そりゃね、こんなところで酒飲んでるからね、どーせたい
したもんじゃないって思っているかもしれないけどさ、あたしだってね、やるときはや
るのよ。やるんだからね。うん、だから歌うわよ。歌うんだからね。あらら、このお店っ
てカラオケないんだ。そーだよね、屋台にカラオケがあったら、お巡りさんに捕まっちゃ
うよね。あ、でもマイクはあるんだなあ、これが。
と、歌い出すシンデレラ。
「酔いどれ女の歌」
風のすさぶ街角 女がひとり 何を待っているのか なみだ酒
飲むほどに 酔うほどに 心が痛くて 酔いよい
風も叫ぶ街角 わたしはひとり
シンデ あのね、こう見えても私は玉の輿に乗った訳よ。別に、こんなしけた店で飲まなくて
も、うちに帰れば、もう飲み放題食べ放題の王女さま気分なわけ。いや、気分って言う
か、モロなんだけどさあ。その前?あ、花の独身時代ね。そう、もう大変だったのよ。
苦労したわよ。あたしさあ、家庭が複雑だったのよね。ママさんは死んじゃうしさ、パ
パさんは新しいママさんもらって、「ほおら、この人が新しいママだよ、新作だよ」と
か紹介しといてその後すぐ死んじゃうしさ。あたしだってね、あたしだって苦労したん
だよ。パパさんが死んだとたん、あの、ほら、継母って言うの?急に本性出しちゃって
さ。
二場
屋台の横の空間に光が当たる。そこには噂の継母。
継母 あ、この床にシミが。これはきっと、カレーライスをこぼした跡ね。はいはい、ほら
ほら、動きが遅いわよ。
シンデレラ、ダッシュで光の中へ。
継母 ここに汚れがあるわよ。ああ、汚れ。私が大嫌いな床の汚れ。私が大嫌いな家のお掃
除。なのにどうして床が汚れているんだろう。これは、これは神様が私に与えた試練な
のね。親不孝な娘を持ってしまった、不幸な私への試練なのね。
シンデ これは、さっきお母さまが酔っぱらってひっくり返した朝ご飯のカレーライスの…
継母 口答えするんじゃないわよ。朝からカレーライスで何が悪いのよ。好きなんだもん、
いいじゃない。だいたいあんた、背が高いわよ。頭が高いわよ。生意気よ。そういうこ
とだから、ちゃんと煮込んでないでしょ。三日三晩煮込まないと、カレーの本当の味は
出ないって言ったでしょ。ずっとかき回してないとダメだっていったでしょ。かき回し
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