屑星の王子様達
屑星の王子様達

登場人物

科学者「J」
伝書鳩「バト」
通り雨
ほうき星
いつかの君


1 プロローグ

  朝もやの中、四人、自転車をこいでいる。

ほうき星  その日、僕は望遠鏡を担いで朝もやの中、自転車をこいでいた。
科学者  その日、私は彼女を追いかけて朝もやの中、自転車をこいでいた。
伝書鳩  その日、僕は、伝えたい言葉を抱えて朝もやの中、自転車をこいでいた。
通り雨  その日、俺は風に吹かれて朝もやの中、自転車をこいでいた。

  いつかの君、彼らの中央に来て、四人を見渡す。

いつかの君  その日、

  暗転

  暗闇の中、様々な声たちが浮かんでは消え浮かんでは消えていく。それは折り重なっているようで、はっきりとしてい
  るようで……
  「ごめんなさい」「最後の晩餐はピサを……」「どうしても出て行くのか?」「すまない」「じゃあね、バイバイ」

科学者(声)  どうせ、行くなら、君との思い出も連れて行ってくれないか?


2 科学者「J」のストーリー

  科学者の研究所。科学者、自転車をこいでいる。
  自転車にはいくつものコードがつなげられていて、奥の方につながっている。

科学者  8000……

  科学者、なおも自転車をこぎ続ける。

科学者  8600、8700…

  科学者、自転車をこぎ続ける。奥の方では何かの科学的反応が……

科学者  9500……9700……
     ……10000!

  火花が飛び散り、研究所がフラッシュする。
  風が渦巻き、嵐を呼ぶ。そして、ひとしきり大きい火花が起きた後、すべてが静かになる。
  科学者、自転車から降りる。
  ぞっとするほどの沈黙。

科学者  (息を荒くしている。)……どうだ?

  また、沈黙が続く。
  いつかの君、ゆっくりと出てくる。

科学者  (小さく呟くように)エリ……
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