今夜は死ぬまでバンガロー
今夜は死ぬまでバンガロー
作 楽静


登場人物


スズキ      22才 エリート街道を進む青年。

サカタ  リエ  24才 英語教師。

フクダ  ユイチ 24才 ひきこもり。

オオヤマ サチ 22才 ツアーコンダクター

ナシトウ     20才 人を探す少女。






    某湖のほとりのキャンプ場。
    バンガローがいくつも並んでいるような、
    それでいて安っぽい作りのキャンプ場である。
    そして、客席から見えるのはそのバンガローのうちの一軒のようだ。
    部屋の中心に、一人分の寝具や荷物やらが置かれている。
    バンガロー12号。それがこの部屋の名前だ。
    舞台の上にはフクダが既に座っている。

    観客席の間を縫うように、スズキとナシトウが連れ立ってやってくる。
    スズキは地図のようなものを持っている。
    キャンプ場で良く渡されそうな手書きの地図である。

    舞台に上がらず、客席の近くで劇は始まる。


スズキ 「えっと、そこが洗い場だから……ああ、これが12号室か。
      じゃあ、あっちだね」

ナシトウ「今来た道、ですね」

スズキ 「そうだね。戻るね。これは」

ナシトウ「すいません。私、方向音痴で」

スズキ 「苦手なの? 吼えるの」

ナシトウ「え?」

スズキ 「だから、咆哮(ほうこう)でしょ? 吼える事。の、音痴。なんてね」


    間


ナシトウ「すいません。私、方向音痴で」

スズキ 「うん。ありがとう。無かったことにしてくれて」

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