デカダンス。
          それは開演10分前。
          入り口から入ってくる一人の男。
観客  「・・・・・」
          観客はその姿に唖然としている。
          それもそのはず、彼の姿はタンスだった。
          タンス、当然のごとく席に着くと開演を待っている。
          暇を持て余し、隣の客と話したり・・・


プロローグ

          そして開演時刻。
          明るくなると、
          司会者が出てくる。
司会者 「はーい、ミナサンこんにちはー!」
          返事を待つ。当然返事は無い。
司会者 「今日はようこそ劇団○○の公演に来て下さって有り難うございます。私は
     本日の司会を承ります、南部五郎です。よろしくお願いします。」
          などと話す。
          と、客の1人。
客   「おい、おい、どうにかしてくれよ。これじゃ見えねえじゃねえか。」
          客は、タンスの後ろに座っていた。
客   「こっちは客だぞ。あんたたち金取るんなら金取るで、客席ぐらいちゃんと
     作ったらどうだ。」
          結構、柄が悪い。
          客、舞台にまで上がって来た。
客   「せっかく見に来てやってんのによー。何考えてんだ、あんたたち。」
司会者 「何言ってるんですか、あなた。そんなことある訳ないじゃ無いですか。私
     たちはですね、皆さんたち、お客さんに楽しんでいただくためだけに、こ
     んなことをやっている訳ですよ。」
          と言いつつ客席へ。
司会者 「そんな私たちがですよ、お客さんを舞台が見えないところに座らせようだ
     なんて思う訳が無いじゃ・・・あ、本当だ見えない。」
          席に座ると見えない。
客   「な、な、見えねえだろ。」
司会者 「おかしいなあ、何で見えないんだろう。おかしいなあ・・・」
          と言って客席と舞台を何度も往復する。
          見えない理由はもちろん、タンスだ。
          タンスはもちろん気付いていない。
          そして・・・
          一番前の席あたりで。
司会者 「あ、わかった。ほら、ここ。ここからだと見えるでしょ。」
客   「おう。」
司会者 「で、ここからも見えるんですよ。」
          2番目ぐらい。
客   「おう。」
司会者 「でも、ここからだと見えない。」
          こことは、タンスの後ろ。
客   「本当だ。」
司会者 「ということは、原因はここらへんに有るはずなんですよ。」
客   「ここらへんか・・・」
          と言ってタンスが座っているあたりを見る。
司会者 「あ、これは!」
客   「タンスだ・・・」
          初めてタンスに気がついた。
          しかし、タンスは気がついていない。
司会者 「何でこんなところにタンスが・・・」
客   「きさまあ、これでも見えるって言うのか?!全く折角金払って見に来て
     やってるのによー。いいかげんにしろよ。」
          タンスの存在を確認した客は強気だ。
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