三日月と蛙
三日月と蛙


       夜半すぎ、二十歳そこそこの男(テシヲ)が秋の心地よい風をうけながら煙草をふ
       かしている。煙草を足下に投げつけ、踏みつける。

テシヲ まだ、7時半なんだろうな。そうだよな。そうだ、そうに違いない、俺が早く来すぎたん
    だ。きっと。

       恐る恐る腕時計をのぞきこむ

テシヲ だっ!あー!く、9時半!!・・・・いや、違う、そんな。あ、そうだ!俺の時計は確かに9
    時半だ。出てくる前に117で合わせたんだから間違っているはずがない。
    ・・・・そうか。たぶん、きっと彼女の時計はまだ7時半なんだ。そ、そうだよ。いや、ひょ
    っとしたら7時25分かも。はは、もードジだなー、そういうところがカワイイんだから。
    はは、ははは。はー、またか。

       そこへもう一人男(太助)が慌てて走り込んでくる。
       キョロキョロと辺りを見渡す。

太助  はー、はー、はー。やられた。くそっ、帰っちまったのか。もう少し待ってくれたってい
    いのに。

       テシヲ、太助の様子を見ている

太助  !?あれ、テシヲ?
テシヲ ・・・・待ち合わせ?
太助  あ、あぁそうなんだけど、少し遅れちまって。
テシヲ ふーん。何時だったの?
太助  え?7時半。かな。
テシヲ し、7時半。遅すぎるよ、それは。(かすかに睨む)
太助  そっか。そうだよな。お前は?
テシヲ 何が?
太助  待ち合わせなんだろ。お前も。
テシヲ あぁ、・・・・・9時半。
太助  もうそろそろか。お前、彼女見なかったかなー?
テシヲ 7時半ねぇ。あ、ひょっとしてさぁ、待ち合わせの彼女って、ショートカットでコンタク
    トしてて、身長157センチで、上から84・58・83ってカンジのカワイイ子?
太助  ズバリだよ。そんな所までよくわかるな。
テシヲ 並みの人間とは目が違うんだよ。
太助  飢えてんな。
テシヲ え?
太助  いや、何でもない。それで彼女、帰っちまったのか?
テシヲ ん?あー、違うと思うよ。
太助  なんで違うって言えるんだよ。ここにいないじゃないか。
テシヲ その子、ついさっき、茶髪にピアスした男に声かけられて、ついてっちゃったもん。
太助  え?どういう事だよ。
テシヲ 二時間も待たされりゃあね。仕方ないんじゃない。
太助  どっちへ行った?
テシヲ あっち。どして?
太助  追いかけるんだよ。
テシヲ 無理だよ。そんなの。
太助  ついさっきなんだろ。追っかけたら間に合うだろ、その男ブッとばしてやる。
テシヲ 二人、車でビューンって行っちゃったんだけど。
太助  !!・・・・・はぁ。俺って本当にダメなヤツ。
テシヲ そうだね、今頃彼女はあの男と、
太助  言うな!イヤミなヤツめ。はーしまったなー、そういうことならもっと早く。
テシヲ 2時間も待ってたのにな、彼女。裏切ったのはお前だからな。
太助  そうか、2時間も・・・・・あれ?お前さっき来たんじゃないの?
テシヲ お、男は2時間前に来るのが当然のことだろ。
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