瞳に夕陽が映る時
瞳に夕陽が映るとき



          雲一つない青空。その中を、小さな鳥が数羽横切った。
          視点が下がり、大きな、白い建造物。
          廊下を歩く男の足音。左手にはB4サイズの茶封筒。汗を拭う右手。
          正面に現れた扉を開ける。そこは、夕暮れ前の屋上。
          眩しそうに目を覆う男。見渡す。車椅子を見つける。
          少し戸惑いながら男は車椅子に近づいた。

ロケット  ・・・・よぉ、エンピツ。元気か?
エンピツ  ロケット?いつからそこにいたの?
ロケット  いま、来たところだよ。
エンピツ  今日はとっても気分がいいんだ。・・・・ほら、空がすっごくキレイだろ。そう思わない?
ロケット  お前、・・・わかるのか?
エンピツ  うん、感じるんだ。風や匂いでさ。
ロケット  ・・・・。

          車椅子がクルリと向きを変え、男に正面を向けた。車椅子の男は目を開けてはいない。

エンピツ  僕、また思い出したんだ。
ロケット  えっ?
エンピツ  ロケットの事、ロケットが来てくれたおかげで、また思い出したんだ。
ロケット  そうか、良かったな。
エンピツ  ロケットって絵が上手だったんだよね。
ロケット  あ、あぁ、そうだよ。
エンピツ  今でも、描いたりするの?
ロケット  そうだな・・・・そこ、暑くないか?

          男は車椅子を日陰の方へとひいていく。

エンピツ  ねぇ、どうして来てくれたの?
ロケット  え?
エンピツ  僕さ、ずっと独りぼっちだったんだ。
ロケット  し、知らなかったんだよ。ごめんな。
エンピツ  ううん、僕、ロケットが来てくれてホントに嬉しかったんだ。
ロケット  オレ達、ホラ、仲良しだったじゃないか。
エンピツ  そうだよね・・・・・・・・ねぇロケット。僕のコトどうしてエンピツって言うの?
ロケット  そりゃ、アダ名だよ。中学の頃みんなが君につけたんだ。
エンピツ  へぇ、そうなんだ。
ロケット  ・・・・ウソだよ。2人で考えたんだ。
エンピツ  2人で?アダ名を?変なの。
ロケット  2人でマンガをさ・・・・
エンピツ  マンガ?
ロケット  あ・・・・・・・・いや、
エンピツ  マンガがどうしたの?
ロケット  読んだんだよ。2人で。
エンピツ  読んだの?2人で。
ロケット  ウソ。書いたんだよ。2人で。
エンピツ  書いたの?マンガを?
ロケット  そうだよ。
エンピツ  どんなの描いてたの?
ロケット  少女マンガ。
エンピツ  ロケットが?僕と?
ロケット  エンピツもだよ。2人でさ。
エンピツ  本トに?
ロケット  ウソだよ。本トはSFマンガ。
エンピツ  SF?・・・・・・・・ホントに?・・・・思い出せないよ。
ロケット  もうやめよう。少しずつ思い出した方がいいよ。
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