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緑の塔

　緑の塔

【登場人物】
　祐天寺・・・緑の塔（食糧植物バイオ研究所）の研究員
　所長・・・・緑の塔の管理責任者

　　　　　　　　夜・・・・閉ざされた部屋
　　　　　　　　月明かりが部屋の中を映し出す
　　　　　　　　男（祐天寺）が一人、水のような物をまいている
　　　　　　　　ドアは２つあり、一方は机や椅子が積まれ塞がれている
　　　　　　　　そこへ、もう一つのドアより男（所長）が現れる

祐天寺　　──────所長。・・・・・準備、出来ました。
　　　　　　　　　　　　　　　　　
所長　　　ありがとう祐天寺君。君はもういい、早く出ていきなさい。

祐天寺　　そんな、所長１人を置いて、出て行けませんよ。

所長　　　いいんだ。私は責任者としてここに残る。「緑の塔」もあの化け物もろとも灰になる。
　　　　　そうするしかないんだ。

祐天寺　　所長・・・どんな研究にだって、失敗はあっても仕方がないことです。

所長　　　失敗には許される物と許されない物がある。覚えておきなさい。

祐天寺　　─────食糧植物バイオ研究所、でしたよね。「緑の塔」の正式名称って。　　　　　

所長　　　あぁ、そうだ。しかし我々の研究はバイオの力をかりて食糧植物を化け物に変えて
　　　　　しまった。

祐天寺　　あれはいったい、何なんですか？

所長　　　４７階のもやしだよ。

祐天寺　　も、もやしですか！？

所長　　　あぁ、もやしを使って、成長の早さを変える研究をしていたんだが、どうもあいつは、
　　　　　動物のように動いて見える程にまで、そのスピードが早まってしまったらしい。

祐天寺　　そんな・・・でもどうして、もやしなんてヒョロヒョロした物が、あんなに太く、
　　　　　青々とした枝を振るうほど狂暴になるんですか！？

所長　　　もやしはもともと日陰で育てるからあんなにヒョロヒョロしているんだ。
　　　　　日光にあててやれば、青々とした葉を茂らせるんだよ。

祐天寺　　では日光にふれたと言うのですか？「緑の塔」はどの部屋も密室になっているはずです。

所長　　　おそらく種子を飛ばしたのだろう。誰かの服にでもついて部屋を出て、日光に触れたに違いない。
　　　　　しかし、まさか、人間の血を根から吸いつくすようになるとは・・・・

祐天寺　　血を吸いつくす!?

所長　　　そうだ。みんな奴にやられた。

祐天寺　　みんなって、１３人全員ですか！？

所長　　　あぁ、ここにいた全員だ。君と私は遅番だったから助かっただけだ。危うく所員が全滅するところ
　　　　　だったよ。われわれが生き残っただけでも救いだ。あいつをここから出さずにすんだんだからな。

　　　　　　　　上の階でザワザワという物音が聞こえる

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