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描け。

描(えが)け。
　　　　菖蒲　万紀彦

【登場人物】

空(そら)...　　　　故人。高校三年生。元美術部員。
　　　　　　　　明るく飄々(ひょうひょう)とした性格。強がり。
　　　　　　　　死後、茜の前に現れる。

茜(あかね)...　　　三年。美術部員。ソラに憧れていた。
　　　　　　　　無口で無愛想だが負けず嫌い。

菫(すみれ)...　　　三年。美術部員。二人の友人。
　　　　　　　　穏やかで落ち着きがある。
　　　　　　　　ソラのことは見えていない。

○学校の屋上（放課後）
　　　　　　　　空が一人で絵を描いている。
　　　　　　　　スケッチブックを手に茜が現れる。
茜　　　「......ソラ？」
空　　　「お、アカネ。やほ」
茜　　　「......なんで」
空　　　「ん？」
茜　　　「なんで、絵、描いてるの」
空　　　「なんでって、美術部が絵描いてて何がおかしいんだよ？」
茜　　　「いやおかしいでしょ。あんたがここにいること自体」
空　　　「俺のことそんな嫌い？うわショックー」
茜　　　「そういう意味じゃなくて......」
空　　　「ごめんごめん、分かってるって」
茜　　　「......描くの、やめたんじゃないの」
空　　　「やめたけど......描きかけの題材があってさ」
　　　　　　　　怪訝そうな茜を手招きする空。
　　　　　　　　空は自分の絵を見せる。
　　　　　　　　茜が空に近づき、絵を見て尋ねる。
茜　　　「......何、これ」
空　　　「夢だよ、夢」
茜　　　「はぁ？」
空　　　「はぁって、おい、見りゃ分かるだろ」
茜　　　「まだ全然描けてないじゃん」
空　　　「余白だよ余白。未完成が俺の美学なんだよ」
茜　　　「（呆れて）あっそ」
空　　　「ほら、見てないで、アカネも描けよ」
茜　　　「私は、いい」
空　　　「（先ほどのアカネを真似て）あっそ」
　　　　　　　　間。
　　　　　　　　絵を見ながら空が話し始める。
空　　　「もう受験生かー」
茜　　　「......うん」
空　　　「あっという間だなーなんか」
茜　　　「うん」

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