天才は凡人たちに殺された
天才は凡人たちに殺された

【登場人物】
・ハル:0から1を生み出す「真の天才」。型破りな発想力と独創性を持つが、世間とはズレている部分も。感情豊かで、映画への情熱は誰よりも強い。
・アキ:1から100に拡大する「凡人の天才」。ハルの発想を理解し、商業的成功に導くプロデュース力を持つ。冷静で現実主義者だが、ハルの才能を誰よりも信じ、憧れている。
・ナツキ:凡人側の友人。流行に敏感で、SNSでの「バズり」を重視する。良くも悪くも一般的な価値観の持ち主。ハルとアキの間に、無意識に亀裂を入れる存在。
・フユキ:凡人側の友人。周囲の意見に流されやすく、批判的なコメントを鵜呑みにしやすい。ナツキ同様、一般的な価値観。


【あらすじ】
0から1を生み出す「真の天才」ハルと、その発想を1から100に拡大する「凡人の天才」アキは、高校生の頃からの親友同士。彼らは共同で映画制作に打ち込み、やがて世間の注目を集めるようになる。しかし、ハルの独創的なアイデアは、凡人たちの「流行」や「二番煎じ」を求める声、そしてSNSでの容赦ない批評によって、少しずつ蝕まれていく。凡人である友人のナツキやフユキの無邪気な言葉、そしてネットに溢れる無責任なコメントが、やがてハルの才能を「殺し」、アキの心にも深い傷を残していく。これは、天才と凡人、そして友情の残酷な青春群像劇。

【その他】
・場面は変わりますが基本部室のような空間で場面ごとに細かな変化をつける感じ
・性別不問、台本上男性で書いています

【本編】

幕が開く

場面1:放課後の密談 – 0から1の閃き

〔L〕放課後の薄暗い高校の視聴覚室。 使い古されたプロジェクターが置かれ、壁には映画のポスターが何枚か貼られている。 ハルがスケッチブックに勢いよく絵を描いている。その横でアキがタブレットを操作している。 机の上には食べかけのお菓子とジュース。

ハ「…なあ、アキ。聞いてくれよ!」
ア「(タブレットから目を離さずに)ん?また変なアイデアか?」
ハ「変なアイデアじゃない!"光のない世界"の映画!」
ア「光のない世界?」
ハ「そう!もし、この世界に色がなかったら、音がなかったら、匂いがなかったら、どうなると思う?」
ア「…誰もが五感を失った世界、か。面白いな」
ハ「違う!五感は失ってないんだ!ただ、世界に色がないだけ。みんなが認識する色がない。でも、感情は色を持つんだ!」
ア「(タブレットを置いて、ハルの方を向く)ほう…感情が色を持つ、ね」
ハ「そう!喜びは黄色、悲しみは青、怒りは赤。みんなの心の中にだけ色があるんだ!」
ア「それは…すごいな、ハル。0から1のアイデアだ」
ハ「だろ!?俺さ、この世界を映像で表現したいんだ!」
ア「…具体的には?」
ハ「モノクロの映像に、感情が溢れた時にだけその色が滲むんだ!例えば、主人公が絶望した瞬間、画面全体が深い青に染まる…!」
ア「(目を閉じて想像する)…鳥肌が立った。まるで心象風景をそのまま見せられているようだ」
ハ「アキならわかってくれると思った!これ、絶対面白い映画になる!」
ア「ああ、間違いない。ハルの発想力は無限大だな」
ハ「アキのプロデュース力と俺の発想力があれば、怖いものなしだ!」

アキ、静かに微笑む。ハルのスケッチブックを覗き込む。

ア「……でも、これを世間にどう見せるかだな。モノクロだと、一般受けは難しい」
ハ「一般受けなんてどうでもいい!俺たちが面白いと思えばそれでいいんだ!」
ア「そうだな。でも、より多くの人に届けるのが俺の役目だ。ハルの"1"を"100"にするのが、俺の役目だから」

アキ、ハルのスケッチブックを指差しながら、具体的な映像化のアイデアを出し始める。

ア「モノクロに一色だけを際立たせる手法は、昔からある。それをどう昇華させるか。物語の構造を、もう少しシンプルに……」
ハ「おいおい、俺の世界を壊す気か?」
ア「壊さない。より強くするんだ。一般の人にもわかるように、噛み砕くの」
ハ「そう……アキに任せるよ。俺は次のアイデアに取り掛かるから!」

ハル、またスケッチブックに熱中し始める。
アキはタブレットを操作しながら、ハルのアイデアを商業ベースに乗せるための企画書を打ち込み始める。

〔L〕暗転

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